年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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家族から学ぶ感謝の気持ち

第08回 2004年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:一般

記事(紹介文)

 
 「何か買った時は店員さんに『ありがとうございます』って言うんやよ」。
私の両親は幼い私にこう言い聞かせていました。そのため、すっかりいい大人になった現在でも、高額な商品を購入した時ばかりでなく、コンビニでちょっとした商品を購入した時でさえ、「ありがとうございます」と自然に口が動いています。私は来春から販売員として働きます。「ありがとう」という言葉をこれまではお客様の立場で何気なく口にしていましたが、来春からは販売員として心からお客様に伝えたいと思っています。そして、普段は販売員にお礼を言わないようなお客様からも「ありがとう」と言って頂けるよう、心地良い時間と空間を提供できたらと考えています。
 私がそう考えるようになったのには、祖父母の存在が大きく影響しています。私の祖父母は趣味程度に桃を栽培しています。「形が悪いけど、味は抜群やあ」と手塩に掛けて育てた桃に自信を持っている祖父母。そんな祖父母が育てた桃を毎年楽しみにしている人が多くいます。車で2時間以上もかかるというのにわざわざ来て購入してくれる人、大切な人に送りたいからと郵送希望で購入してくれる人。祖父母には様々なお客様がいます。そして、形が悪く売り物にならない桃を切ってお客様に食べてもらうことが祖父母の楽しみになっています。目の前で食べてもらい、「美味しい」と言ってもらえることが一番嬉しい、と祖父母は言っています。直接お客様の喜ぶ顔を見ることで、桃を育てた苦労も癒されるそうです。そして年の始めには、祖父母宛に多くのお客様から年賀状が届きます。「今年もおじいちゃん、おばあちゃんの桃を楽しみにしています」と。そしてその年も桃作りが始まるのです。
 しかし、祖父母の桃栽培は五年ほど前からなくなりました。年老いた祖父母の体を気遣い、桃の木を数本残し、あとは切ってしまったのです。祖父母は、もうお客様の笑顔が直接見られないのが残念、と肩を落としていました。しかし、驚いたことに、年賀状は毎年届いているのです。お客様は忘れていないのです、祖父母が大切に育てたあの甘い味を。そして、祖父母もお客様の期待に応えようと、祖父母の桃の代わりに、近所の桃農家に頼みその桃を送っています。なんとかしてお客様に美味しい桃を届けようと頑張る祖父母を見ていると、あんなふうにお客様に喜んで頂けることは何か考えられるようになりたいと思います。そして、いつか私もお客様から年賀状という〈感謝状〉を頂けるような販売員になりたいです。

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