年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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楽しく働く

第09回 2005年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:一般

記事(紹介文)

 
 行きつけのスーパーで、ある不思議な現象が起きていた。いつも行列ができるレジがあるのだ。他のレジが空いていても…。
その原因はレジ係のAさんのせいだった。Aさんには沢山のファンが存在するのだ。
 では、その理由は何か? 私はその真意を確かめない訳にはいかなかった。職業柄、私は少し意地悪な目でAさんを観察することにした。
爽やかな笑顔、凛とした姿勢、機敏な動き、優しい心配り、洗練された会話、などなど。それは完璧に近かった。私は納得した。
数日後、その日は私たちの結婚記念日だった。ふと、Aさんを思い出し、そのスーパーに向かった。パーティのために一寸だけ高価なシャンパンを奮発して、Aさんのレジに並んだ。「今日は何かお祝い事ですか?」Aさんの遠慮がちな声に、私は慌てて答えた。
「結婚記念日なんですよ。45回目の…」
「それはおめでとうございます。お幸せですね。どうか素敵な記念日の夜をお過ごし下さい」。そう言いながら、何気なく、シャンパンに可愛いリボンを結んでくれた。その夜は心に残る結婚記念日になった。
 「今日はお一人ですか? お寂しいですね」「今日はお客様をお迎えするのですか? 大変ですね」といった会話は、お客の買った商品がヒントになるのだ。この何気ないAさんの温かいメッセージにお客は感動し、ファンになってしまうのだろう。しかも、Aさんの決して深入りしない謙虚な態度に信頼を深めていくのだろう。リボンやシールなどを自前で準備し、お客様を喜ばす演出は心憎いばかりである。
いつしか、私もすっかりAさんのファンの仲間入りをしていた。
 Aさんはいつも言う。「私は、同じ働くのなら、楽しく働きたいと思っているだけなんですよ」と。何と小さくて大きい目標なんだろう。<楽しく働く>ことの大切さと、その真意をこれほど如実に実践してみせるAさん。きっと、Aさんの楽しさがみんなに伝わって、みんなの心をも楽しくしてしまう力を持っているに違いない。レジ係という一見単純に見える仕事とひたむきに取り組み、楽しく働くことで多くのファンを作ってしまうAさん。凄いと思う。
 「勝手に買えばー」と言われて、「じゃ、勝手に買いますよ」というような状況の中で買物をすることになるスーパーにあって、買物の締めくくりであるレジの場で、お客の心をホットな気分にさせてくれるAさん。これはもう本物の接客プロと言わざるを得ない。
今、Aさんと出会ったことを心から嬉しく思っている。今日もきっと、Aさんのレジの前には長い行列が出来ていることだろう。

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