年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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パワーアップ

第10回 2006年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:婦人服販売店勤務

記事(紹介文)

 
 ある夏の日、買物カートを引いた年配の女性が入店されました。セール中で少し混み合っていたこともあり、私は「いらっしゃいませ」と笑顔で言い、どういう目的のお客様かなと思いながらも、すぐには接客につきませんでした。
 しかし、そのお客様は熱心に店内をご覧になっていらしたので「何かお探しですか」と声をかけました。その方はクルッとこちらを向いて、「私、かわいいお店を見るのがすきなの。このお店ステキね」とおっしゃいました。私は(そういう風に見て下さってたんだ)と、とても嬉しくなり、「有難うございます! ぜひゆっくりご覧になって下さいね」と言いました。ところがその後、「若い方のお店かしら。私なんかが着たらおかしいわよね…」とおっしゃるのです。私はすぐに、「うちのお店は60代のお客様もいらっしゃいますし、気になさらなくても大丈夫ですよ」とお伝えしたのですが、「でも…」とまだ少し抵抗があるご様子でした。
 よくよく伺ってみると、体型にもコンプレックスがあるとのこと。確かに大柄でいらっしゃるので一瞬サイズがどうかなと思ったのですが、せっかく好きと言ってくださって着たいという気持ちもお持ちなのに、試す前から諦めるなんてもったいないと思い直し、じっくりお話を伺い、お好みのものでサイズの問題がない商品を一緒にお探ししたいとお伝えしたところ、そこまで言うならとまた見ていただけることになりました。
 ここからが販売員としての腕の見せどころです。体型カバーを考慮しつつ、お好きな雰囲気、お似合いになりそうな型・色など思いめぐらせ、3パターンのコーディネイトをしたところ、ひとつのコーディネイトに手が伸びました。「これなら着れるかしら!」。それは3パターンの中でも一番地味目なコーディネイトでした。ところが、お客様はその地味コーデにかごバッグをつけ足したのです。「さっきから気になっていたの。あなたに合わせてもらったお洋服にピッタリ!」とおっしゃって、ご試着後、バッグを合わせると良くお似合いになって、鏡の前ではつらつとしていらっしゃるお客様を見て嬉しくなりました。お客様もとても気に入って下さり、2人でとても盛り上がりました。
 いろいろとお買い上げ頂いたのでお荷物が大きくなってしまい、ご自宅まで郵送することになりました。私はそこに、いろいろとお話が聞けて楽しかったこと、私がお勧めしたものを気に入って頂けて嬉しかったこと、沢山の有難うございましたの気持ちをその方が帰られてすぐの熱い心のままカードにし、包みを開けられてパッと目に飛び込んでくる位置に添え、驚いたり喜んだりして下さっているお客様を想像しながら心を込めて放送しました。
 後日、そのお客様が再来店して下さり、「メッセージカードがあるなんて思いもしなかったのでびっくりしたがとても嬉しかった」と言いに来て下さったと別のスタッフから聞いた時、嬉しくて涙が出そうになりました。私はお客様に心から喜んで頂けるようにとお客様のために行動しました。お客様は嬉しかったと伝えるためにわざわざ私のために来て下さった、私の気持ちとお客様の心が通い合ったと確信しました。
 人のために何かをする、できる喜びを知った私は、人として社会人として販売員としてパワーアップした気がします。これからも、心を込めた仕事でお客様のため、自分のため、周りの人のために成長していきたいと思っています。

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