年度別受賞作品
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最後のプレゼント

第11回 2007年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:羽鳥素生
所属企業:㈱板垣 榛名店

記事(紹介文)


 山の頂上でメガネを掛けて満足そうに笑っている写真が飾ってある。その下にはキズの付いたメガネが大切に置いてある。もう誰も掛けることのないメガネがそこにある。
 私はメガネ店で働いて、いろいろなお客様にメガネを販売してきました。しかし、今回メガネを作ってほしいと言ってきたお客様は私の父でした。父とはいえ、お客様という気持ちでどんなメガネが似合うか、どんな時に使うかなど接客をしてメガネを選びました、今まで大した親孝行もしていなかったので、今回はメガネを父にプレゼントしました。プレゼントしたメガネに父は大変喜びました。
 そして、その夏、父は長野の山に1週間登山に出掛けました。もう年なので本格的な登山は危険と周りのみんなから反対されたそうです。それでも父は出掛けました。父は山から毎日母に電話をしていたそうです。そして母に「新しいメガネは良く見えるよ」と言っていたそうです。下山最後の日にもいつも通り電話があり「明日帰るから」と母に伝えました。しかし、それが父からの最後の電話になりました。父は山から滑落してしまい、ヘリコプターで発見された時はもう死んでいました。
 葬儀も終り、父の遺品の中からカメラが見つかりました。写真を現像してみると父の嬉しそうな顔の写真が数多くありました。その顔には私のプレゼントしたメガネを掛けていました。父は、最後私のプレゼントしたメガネを掛けて何を見て、何を思ったのだろうと考えました。答えは写真の中の父の笑顔だと思います。
 私は今も毎日お客様にメガネを販売しています。メガネは本当にお客様が生活していくうえで大切なものであるという事を改めてしることが出来ました。 そして父のメガネは今も写真の下にあります。最初で最後のプレゼントがそこにあります。

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