販売という仕事の喜びと意味

第11回 2007年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:婦人服販売店勤務

記事(紹介文)


 「この前買ったばかりのジャケットが色落ちしてTシャツに色が付いて、出張先で恥をかいたじゃない! その時の店員は色落ちするなんて一言も言ってくれなかった」というクレームのお電話をいただきました。私もよく出張に行くので、お客様の気持ちに共感できて本当に申し訳なかったという思いでした。
 お話を最後までお聞きして、購入されたTシャツの代金と色落ちしたジャケットの返品を申し出ましたが受け入れては下さいませんでした。(どうしよう・・・)と言葉を失っていると「実はこのジャケットをとても気に入っていて返品したくないんです。でもあなたの対応がとても良くて怒りが消えました。前はよくお店に伺っていたけれど、担当の店員さんが退職されたのでなかなか立ち寄れなくなって・・・。
 どこのお店に行ってもやっぱり自分に合う服が見つからなくて先日伺ったんです。好きなお店だからこそ色落ちする商品を扱っているのは残念だし、他の方が自分と同じ気持ちになってあなたのお店を嫌いになるのがどうしても嫌だったから勇気を出して電話させてもらいました」とおっしゃいます。胸が熱くなり、今まで味わったことのない感情に声が震えました。続けて「このジャケットの新品と交換してください。色違いで全色あれば頂きます。一緒に買ったTシャツも色違いで欲しいです」という思いもよらない言葉にビックリしました。そして本当に嬉しく思いました。私どもの商品を本当に好きで信頼してくださっている気持ちを裏切らないため、メーカーとお店で色落ち商品の原因と取扱い方法について確認しました。
 お客様の自宅が郊外だと知り、こちらから伺う事にしました。地図を握りしめ、電車を乗り継いでご自宅に向かいました。お客様からの説明は車の道順だったので、まさか電車で来るとは思わなかったようで大変驚かれました。「是非中に入って休んで下さい」と声をかけて下さいましたが、まずジャケットについて謝罪し、色落ちしたジャケットとTシャツを見せていただきより深く頭を下げました。
 すると「初めは怒るつもりで電話したのに最後まで話を聞いてくれてありがとう。礼儀よく対応してくださったし、家にまで持って来てくれたこと、本当に感動しました。あなたを見れば会社の教育が行き届いているのが分かります。とても素晴らしい会社にお勤めされているんですね」と言ってくださったのです。
 その時、今まで教わった事はこういうことか、無駄な事はひとつもなかったんだ、と気付かされました。玄関でのやり取りは1時間ほど続き、持参したジャケットを交換、他5点はその場で購入して下さいました。帰り際、「色落ちの原因をしっかり調べた上でお手紙を送らせていただきます」と深く一礼すると、お客様は「ありがとう」と言って私が見えなくなるまで手を振ってくださいました。この店で働く事ができて幸せ者だなと足どりも軽く、自分の仕事のやりがいを感じて頬がゆるんでいるのがわかりました。
 後日、手紙を書きながら涙が出ました。思い返せば返すほど、電話やご自宅で言って下さったたくさんの温かい言葉が私の力となり笑顔へとつながっています。
 いろいろなブランドが競合する中、自店を選んでご来店、ご愛用して下さるお客様に支えられていることを再度痛感しました。そしてお客様から販売という仕事の喜びと意味を教えていただいたのだと思っています。

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