私の顧客満足

第11回 2007年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:婦人服販売店勤務

記事(紹介文)


 商品の服をたたみながら、何気なく店の外を眺めた。こっちを見ながら歩いている女の子がいた。見覚えのある子だった。私は思いっきり手を振った。
 初めてその子に会ったのは私がまだ転勤する前の店で、今と同様服をたたんでいる時だった。夕方になるとよく来る女子高生のグループの1人だった。よくセール品のワゴンの中をあさり、時々買っていく。
 ある時、めずらしく1人で来ていた。どうやら前見に来た時に気になっていたようだ。鏡の前で悩んでいたので声をかけてみた。それからはお店に来ると会話を交わすようになった。
 いつもの様にセール品を買って帰る時、「お姉さんってさあ、変わってるよー。普通、高いのとか薦めるでしょう? 一緒になって安いの探してくれるよね」と言った。私も高校生の時はお金なかったし、強引に薦めてくる店員は嫌いだった。私に出来る限り、その子の求める服を選んであげたかった。いつもその子は「ありがとう。また来るね」と一言。笑顔で帰っていく。
 この時だけは違った。もうすぐ閉店だというのにその子はやって来た。こんな時間にと思い、話をきくと、「お母さんとケンカしてさあ、今日お姉さんち泊めてよー」と笑って言った。私もそんな時あったなあと思いながら、「泊めてあげてもいいけど、いずれは家に帰らなくちゃいけないよね。時が経てば経つほど帰り辛くならない? 感情的になってここまで来ちゃったんだろうけど、落ち着くまでここに居ていいよ」と言うとその子は泣き出した。すごく辛かったのだろう。
 すぐ後両親が迎えに来た。何が理由なのかは知らないが、家を出てくるほどこの子は悩んでいたんだろうと思う。少しして私は今の店に転勤し、その子とはそれきりだった。あれから1年経ち、久しぶりの再会だった。「すごい久しぶりだねー」と声をかけると、「お姉さん覚えててくれたんだぁ」と照れ笑いをした。就職して地元にいないらしく、たまたま買物に来た店で私を見かけたと言う。今思えば、お母さんとのケンカの原因は進路の事だったのかもしれない。以前と同様、一緒に服を選んだ。ひとつ違ったのは、セール品ではなく、入荷したばかりの商品を買ってくれたことだ。
 金額でもなく、買ってくれた枚数でもなく、どんなに安くても本当にお客様が必要としている服を喜んで買ってくださった時こそ、本当の顧客満足ではないかと思う。私のお客様も「お姉さんに服選んでもらおっかな」と店に来てくれた。そして最後には一言、「ありがとう。また来るね」

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