心を込めた接客

第12回 2008年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:眼鏡販売店勤務

記事(紹介文)


 私がメガネの販売員として店頭に立ち、およそ半年が過ぎようとしています。店が混んだりして忙しいとつい、全てのお客様に心を混めて精一杯の接客ができなくなる事も時々ありました。
 ある研修で、22年勤めているベテラン社員のお話を聞く機会がありました。彼女が私たちに何回も言った事は、「全てのお客様との出会いは一期一会。この方とお会いするのは人生で一度きりかもしれないのだから、通りいっぺんの仕事はしない事。多少自分が疲れていてもお腹が空いていてもぐっとこらえて精一杯あたりなさい」という事でした。
 この言葉にはっとさせられ、それからは接客に対する考え方が変りました。雨の時、来店されたお客様には自動ドアまで走って行き、「雨の中ご来店ありがとうございます。よろしければタオルをお使いください」という一言を言うようにし、体調が悪く疲れている時でも笑顔で精一杯接客するようになりました。
 ある日、小学3年生の女の子がお母さんと初めてメガネを作りに来店しました。初めてだから、軽くて、かけやすくて、お顔にぴったりな物で、彼女が気に入るデザインフレーム、という事で私なりに一生懸命接客し、納得するメガネを選んであげる事ができました。しかしそのメガネは加工に通常より時間がかかってしまい、その女の子が来週メガネを掛けて出かけたかったコンサートに間に合いそうにありませんでした。けれど、せっかく気に入って選んだフレームだからという事で変更せず、急ぎでレンズを発注し、手配をしましたが、メガネができたのはコンサートのちょうど翌日になってしまいました。
 メガネの引渡しの日は日曜日で、とても混み合っている中、女の子とその母親は来店しました。私は他のお客様の接客中で、手が離せなかった為、他の社員に引渡しをしてもらっていました。一区切りついたので、女の子のところに挨拶とお詫びに行きました。「せっかくのコンサートに間に合わなくてごめんね。でも凄く素敵なメガが出来上がっているから、大事にしてくださいね」。
 その直後新しい来店客が見えたので、女の子と交わした言葉はそれが最後でした。私はメガネが間に合わなかったことと、引渡しの際に自分がしっかり担当できなかった事で、女の子には十分満足させてあげられなかったと思い、残念な気持ちになりました。
 それからお客様が引き、店内が静かになってから、先輩社員が、「さっきの女の子がこれをお姉さんに渡して下さい」って言っていたよ、と私に渡したのは折り紙のツルでした。折り紙を四等分して折られた2羽のツルは、私がお客様からもらった初めてのプレゼントでした。小さな事ですが、少しでも感謝してもらえたのがとても嬉しく、失敗しても一生懸命やる事の大切さを学びました。

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