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ごほうびは何線?
第13回 2009年度 受賞作品
入賞作品
作者名:林 樹里
所属企業:㈱オカダヤ 新宿本店
入賞作品
作者名:林 樹里
所属企業:㈱オカダヤ 新宿本店
記事(紹介文)
入園・入学を控えた親子連れの目立つ3月の週末。お昼時になり客足は落ち着き、とても静かな昼下がりでした。
そんな時、ある1組の親子が来店されました。お母さんとお父さん。そしてお父さんに抱かれた眠る赤ちゃんと、どこか不機嫌そうな5~6歳ぐらいの男の子。売場に現れたときには既に男の子の口はへの字に曲がっていました。どことなく赤い顔をして、かなり不満顔。色々と駄々をこねてはいるものの、そこはおにいちゃん。しっかり我慢して一緒にお買い物ができるのかな?と思ったそのときでした。堰を切ったように大泣きし始めてしまったのです。ちょうど店内が静かな時間帯であったこともあり、隣の売場にも聞こえそうなほど男の子の泣き声が売場中に響いていました。
これには流石にご両親もお困りのようで「君のワッペンを選んでいるんだよ。好きなの選ばなくていいの?」 など、一生懸命機嫌を持ち直そうとなだめる言葉を掛け続けていましたが、泣き声はどんどん大きくなる一方。他のお客様の視線も集まり始め、何だか居辛くなってしまっていました。
私はどうすることもできず、見ていることしか出来ず、時間は過ぎていきました。その時、男の子がしゃくりあげながら発した一言にピンときたのです。「でんしゃ! でんしゃが見たいー!!」
そうか! 電車が見たくてずっと我慢していたんだ! ようやくこの子の気持ちが理解できたのです。ですが当然オカダヤの中に電車などありません。「ここには電車は無いから今は我慢して!」 ご両親も困り果ててしまい、一度店を出るかどうか検討されているようでした。しかし、私は思い出したのです。オカダヤ服飾館のエレベーターは外が見えるようになっていること。そして見える景色はJR新宿駅直前の何路線もが行き来する、超大型の路線であること。思いついた時には、私はおにいちゃんの目の前にかがんでいました。
「ねぇ、ぼく、知っているかな? あっちのエレベーターはね、大きな路線が見えるんだよ。良い子でお母さんとお買い物が出来たら、きっと大好きな電車が通ってくれるね!」。思わず声をかけてしまっていたのです。
ご両親はハッとした様子でエレベーターの方へ目線をやっていました。私は改めてご両親に、「あちらのエレベーターですが、新宿駅手前の大きな路線が見えるようになっておりますので、是非お帰りの際にはあちらのエレベーターをご利用下さい。」とご案内させていただきました。
大変喜ばれたのもそうですが、何より息子さんをご覧になって大変安心された様子でした。なんと電車が見えるエレベーターがあることを知り、すっかりご機嫌な表情に変わっていたのです!
「じゃあ、帰りは絶対にあのエレベーターに乗ろうね」 そう言いながら家族揃ってワッペンのコーナーをしばらくご覧になっていました。そしておにいちゃんは駄々をこねることもなく、お母さんと仲良くお気に入りを見つけていました。
お会計を済まされた後、家族みんな笑顔でスタッフに手を振りながらエレベーターの方へ向かわれました。エレベーターの中から、どんな電車が見えたかな? そんなことを思いながらお見送りしていると、なんだか自分まで楽しみな気持ちでいっぱいでした。
今頃、あの子は立派な小学1年生。クラスいちの電車博士になっているかもしれませんね。