年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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二人がくれた贈り物

第14回 2010年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:時計販売店勤務

記事(紹介文)


 それはクリスマスが近い、12月のある夜の事でした。街もお店も賑わい、沢山の笑顔で溢れていました。そこに大学生くらいのカップルがご来店されました。
 とても迷っているようでしたのでお声をお掛けしたところ、「クリスマスプレゼントにペアウォッチを探しているんですが、なかなかいいのがないんです」との事でした。ご予算をお聞きすると、ペアウォッチの相場には届かない難しい金額でした。お客様もかなりの件数の店舗をご覧になったようで、半ば諦めかけている表情を見て取ることが出来ました。ご要望に応える商品はないと断るのは簡単ですが、思い出に残るクリスマス、残念なものにさせたくありません。考えた末、ひとつの提案をさせていただきました。
 リーズナブルな当社オリジナル商品の中で、形を合わせて違うデザインや、色を合わせて違うデザインなど、2人だけの特別なペアウォッチを作るという提案です。それは既存のペアウォッチの固定概念を捨てて、お客様が選ぶという発想の転換です。お二人の好みを伺った上で、彼にはスクエア型のボリューム感のあるデザインを、彼女には同じスクエア型の華奢で可愛らしいデザインをお勧めしました。するとお二人の表情がみるみる笑顔に変わっていきました。
 「面白い! お互いの好みにぴったりです」その笑顔とその言葉を聞いてとてもホッとしたことを覚えています。お見送りの際、「お二人だけの特別なペアウォッチが見付かって良かったです。これからも仲良く付けてくださいね」。「もう、時計は諦めようかと思いながら、駄目元で最後に入ったお店なんです。入って良かった。あなたに接客されて良かった。ありがとうございました」。
お二人がお辞儀をしながら言ってくださった言葉に胸がいっぱいになりました。あの時提案を伝えていなかったらこの瞬間を迎えることはなかったでしょう。思い切って伝えてみて良かったと心から感じました。
 お客様を想う気持ちにこれが正解という明確な物差しは無いように思います。一人ひとりのお客様の要望に自分自身の経験や環境で考えられる最高のおもてなしをする。もし少し違ってしまったとしても、心を込めた行動に嫌な気持ちになることは少ないと思います。この経験から接客の奥深さと喜びを教えていただき、仕事に対する姿勢を正すきっかけにもなりました。
 今でも通り過ぎるカップルを見るとこの記憶が蘇り、私の心にあたたかな光が差し込みます。さあ今日も頑張ろうと背中を押してくれます。この気持ちは二人がくれたかけがえのない贈り物です。

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