年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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ヨクデキマシタ

第01回 1997年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:CD販売店勤務

記事(紹介文)


 私は販売という職種に就いて、もう6年になるが、今だに外国人のお客様が来ると緊張してしまう。何とか片言なら英語らしきものをしゃべれるのだが、ダーッと流暢に話されるともうお手上げだ。
その日、久々に外国人女性が来店した。何か私にききたそうにしている。緊張で固まりながら彼女が近付いてくるのを待った。「スイマセン」。ああっきたっ! 凍りついた笑みを浮かべて「ハイ、いらっしゃいませ。」手にはエニグマのCDを二枚持っている。「コレハ、ムズカシイデスカ?」良かった、日本語だ…でもきかれた事がさっぱりわからない。「え?」聞き返すとまた「コレハムズカシイデスカ?」。『難しいって何? 曲の内容?それとも歌詞?』その時の私を漫画で画いたら、きっと頭からクエスチョンマークがいっぱい出ていただろう。今思えば、きっと「激しい曲調=ハード」の事を彼女なりに日本語訳した結果が「ハード=難しい」だったのだろうが、動転している私に考える余地はなく、「こちらがシングルで、同じ曲のバージョン違いが四曲入っています。こちらはアルバムで、全部違う曲で10曲入っています」という的外れな受け答えをしてしまった。彼女もそれを察したらしく「OK」と言って別な質問をしてきた。
 「今年のアメリカのグラミーアワードでナンバーワンになった女の人のはありますか」…グラミー賞のナンバーワンって誰だっけ、ああ、思い出せない!「金髪でフワフワした髪の、ちょっとカントリー入ってる…」「カントリー? あ、ガースブルックス?」「ノー、ガースじゃなく…」。誰なんだー! 平静を装っていたけれど、もはや頭の中はパニックだった! その時だった。突然名前が浮かんだのだ。「アラニスモリセット?」「ワカラナイ、そのCDありますか?」心境として点火したての花火である。
 パッとCDを手に取って彼女に渡した。1曲目を指差し、「コレデス!」。頭の中で花火が上がった。「良かったー!」 私と彼女は拍手して答えにたどり着けて事を喜んだ。まさに狂喜乱舞という言葉がぴったりくる程の喜びようだった(と思う)。アラニスモリセットと、最初に変な説明をしてしまったエニグマのCDを彼女は買って行った。お会計の時、彼女はニコニコして言った。「ヨクデキマシタ」。またもや意味不明。でも何となく気持ちは伝わる。感謝されているのね、と。お店を後にする時も「ヨクデキマシタ」と彼女は言った。本当にちゃんと探すことが出来て良かった!
 苦手な外国人客にも今度からはきっともっと努力して接客できる。今回の私はとてもヨクデキタのだから…。

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