年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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心の会話

第15回 2011年度 受賞作品
入賞作品
作者名:長沼みづほ
所属企業:㈱ドンク 日本橋ジョアン店

記事(紹介文)

 「パパ! パンの国って本当にあったんだね!」
 目をキラキラ輝かせ、お父さんと手をつなぎながら過ぎ去った男の子。突然の言葉に私のテンションは急激に上がり、心の中ではガッツポーズ! 今でも思い出すと顔はにやけるばかり…。そんな出来事がありました。
〝パンの国って一体何の話?〟。私の勤務するパン屋さんでは、ゴールデンウイーク中に〝子供たちが楽しめるパン屋さんを展開しよう〟とキッズフェアを開催しました。テーマは〝くま店長が君に会いにやってきた!〟。巨大なくま店長のディスプレイを製作、「みつばち県とろーり村の森のパン屋さんから特別に、みんながドキドキ・ワクワクするパンを作りにくま店長が日本橋にやって来た!」という物語です。パンダさん、かめさん、ライオンくん、うさぎちゃん。可愛らしい動物のパンや、クリームパンやメロンパン、コロネなど、いつもは普通のパンが、この時だけはと顔を書かれ、まるで生きているかのようなパンを沢山並べました。それがパンの国です。
 パンを見てはしゃぐ子供たち。子供が楽しむ姿を幸せそうに見守る大人たち。 OLさんのランチタイムともなれば、携帯を片手に写真を撮る人が多いこと。おじいちゃん、おばあちゃんはお孫さんに持って帰りたいと微笑み、沢山の方に喜ばれる光景が目に映りました。
 そんなパンの国を見て、少年は目を輝かせたのでしょう。クッキーで出来ているお菓子の家が本当にあったらと小さい頃に考えたりしませんでしたか。頭の中いっぱいに思い描いた夢の世界が現実にあったらどんなに嬉しいか。きっと少年の目の前には夢の世界が広がっていたのでしょう。その少年と私は会話をすることもなく、お店の一角から見届けただけですが、心の中の会話は充分に成立していました。私たちのお店やスタッフが伝えたかった想い。お客様にこう感じてもらいたいと考え、作り上げたものがストレートに少年には届いたのです。言葉のない、目には見えない心と心のキャッチボールです。
 毎日1000人以上が来店され、自分が関わるお客様は何百人もいらっしゃいます。お客様の一人ひとりに最高のおもてなしをすることは勿論大切なことです。一方で、直接話をしなくても伝えたい想いやメッセージを発信し、お客様にとって最高の瞬間、最高の場所、最高のテンション、それを作るのも販売員の大切な役目であり面白さです。
 売り場は私たち販売員にとっては最高のステージです。ここに来るとなんか楽しい! なんだか胸が高鳴る! 期待に胸を膨らませ、〝また来たい〟〝わざわざ買いに行きたいパン屋さん〟と言って頂ける、そんなお店を目指し、これからも、最高のステージで力いっぱいのパフォーマンスを出来るように。今日よりも明日、明日よりも明後日、夢が広がるパン屋さんを目指します。

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