後悔のない一生の仕事

第01回 1997年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:紳士服販売店勤務

記事(紹介文)

 
 入社して半年がたとうとしている。何の仕事をしようかと迷っていた学生の頃は、父が銀行に勤めていたため、私も銀行に勤めようかとも考えたが、親などにあまえて一生の仕事を決めたくなかったし販売するにあたって多くの人と接したいという意志があった。自分自身の意思で面接を受け、内定を頂き、そして高校を卒業して研修に行き、売場に出るまで緊張と不安とたくさんの気持ちが私の中でぶつかりあっていた。
しかし、まだ先輩に比べればたったの半年にすぎない時間でも、今では緊張と不安が、いつのまにか誇りに変わった。私の1日はいつも掃除から始まる。一番最初に店に出社して教えてもらった仕事は掃除だった。制服に着替えて、バケツに水をくみに行き棚やガラスを拭く。たまにビルのおじちゃんに冷えたコーヒーをもらうこともある。そのおじちゃんに「いつも早いね。」と言われニコッと笑って「掃除しないと汚いからね。」と話すとおじちゃんが「早く嫁さん行かんね、もらいてがない時はおじちゃんがもらうよ。」と私はまだ若いながらにも言われてしまった。それから店が開店する。学生さんや年上の方や親子連れ、いろんな方が来られて私は接客や商品出しやその日の仕事をする。中でも自分の手でメンバーズの会員を獲得したり、メンバーズのリピーターの方が来られた時は何よりも喜びを感じる。ついこの間うれしかったことは、私がとったメンバーズの方で結婚されていて、ずっと職探しの途中で店にもいつもスーツ姿で来られていたのが私服で来られて、年下の私にうれしそうに「仕事決まったんですよ、報告しようと思って」と。その一言が私は本当にうれしかった。 
 また別のある日、元気な高校生のメンバーズの子が友達を連れて「お姉ちゃん来たよ。」と。その子のお母様からも「いつもありがとうございます。」となぜかお礼まで言われたりもした。しかし、毎日良いことばかりではない。この世の中、顔も違ければ性格も違うため仕方がないと思う時もあるが、辛い時こそメンバーズのリピーターの方などに励まされる。良いことも悪いことも含めて全部私には想い出となり、人との出会いとなり誇りになっている。たとえ、お客様が商品を買わないにしても、顔を見せに来て下さるだけでも、私にとっては大きな利益になる気がする。まだまだ仕事をするにあたって完璧ではないし、先輩やお客様に教えてもらうことは山ほどあるが、好きで自分で決めた仕事にいつでも誇りはもちたいし、先輩を越えたいとも思う。毎日めまぐるしくいろいろな事がある中で「どんなにキャリアを重ねても私は新入社員」と言い聞かせながら1日が繰り返されている。
 少しずつ誇りが持てるようになってきたある日の朝、父が休みの時、駅まで送ってもらった車の中で父は運転しながら前を向いて私に一言。「今の仕事に後悔してないのか。」と言われ、私は「うん、後悔してないよ、ずっとやっていけるよ。」と答えた。迷わずに素直にこう答えられたことは、父に対してのお礼でもあったし、反対をおしきって今の仕事につけたことは親には心から感謝している。今以上に喜びを感じたり、苦労したりしていくだろうが、めげずに成長していきたい。そして仕事を積み重ねた上でいつか仕事場を離れる時、振り返ってみて、誰にも負けないぐらいの誇りと信頼と自信、そして喜びを手にして売場を離れていきたい。

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