年度別受賞作品
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小さな出会い

第11回 2007年度 受賞作品
受賞者インタビュー
作者名:髙坂育子
所属企業:㈱ユーハイム 立川高島屋店

記事(紹介文)

第11回(2006年) 最優秀賞 「小さな出会い」
㈱ユーハイム ユーハイム・ディ・マイスター立川髙島屋店 店長 髙坂育子さん

― 最優秀賞、おめでとうございます。今回応募されたきっかけは?

髙坂 研修で「入社3年目の区切りとして、お店で印象に残っている体験談を書いてみよう」という課題が出ました。月日が随分経過していたので正直受賞の知らせを聞いても、あまり実感は湧きませんでした。少しずつ賞の重みがわかってきて、ただただ驚いています。私自身は転勤が多く、この3年間で4店舗目です。
 エッセイは新宿の店での出来事。その頃私は店長になったばかりで少し自信をなくしかけていました。バウムクーヘンの写真撮影に関してはスタッフから様々な意見が出て、販売に対する皆の考えや姿勢にも触れることができました。課題として書いたエッセイでしたが、悩んでいた私をちょっと立ち止まらせ、販売という仕事を考えるための貴重な体験になったと思います。

― エッセイにはバウムクーヘンのエピソードが書かれていました。

髙坂 この文章にある「切る前の大きなバウムクーヘン」とは〝一本焼き〟のこと。お客様からは「ホームパーティで使いたいので買えないですか」とよく聞かれます。心棒の周りに焼かれたバウムクーヘンが付いていて、それを引っ掛けるホルダーが必要ですから持ち帰ることは無理です。一本焼きの切り売りは全ての店にあるわけでなく、お嬢様はどちらかでご覧になられて興味を持ったのでしょう。ギフト用に包装された箱入りの商品ではなく、バウムクーヘンというお菓子の本来の姿に驚かれたのかもしれません。大人では気づかない観点ですね。たとえ販売には結びつかなくても、お客様に喜んでいただけたという事実がとても嬉しく、仕事に自信をなくしかけていた私に勇気を与えてくれた印象深い出来事でした。お客様が様々な角度から私たちの商品をご覧になっていることもよくわかりました。

― 髙坂さんも前からバウムクーヘンはお好きだったんですか?

髙坂 就職活動をしていたとき、入ったユーハイムのレストランでアイスクリームが添えられたバウムクーヘンを食べました。あのときの美味しさは今でも忘れることができません。あの美味しさが私を入社試験に向かわせたようなものです(笑)。もともと母がユーハイムの大ファンで、私もその影響を受けたのかもしれませんね。自分の大好きなものに囲まれた売場で、その美味しさをお客様にお伝えする仕事をしてみたいと思いました。素材や製法に徹底的にこだわりを持ったお菓子ですから「バウムクーヘンならユーハイムがいちばん」と自信を持って言えます。自分自身が本当に美味しさを知っているからこそ、この仕事はとても楽しくやりがいがあります。
 今バウムクーヘンは、従来の形の他に筒入りの細長いものや個包装のものなど様々な形があります。お客様には商品についていろいろご説明し、ご用途にいちばん合った商品をお薦めしています。仕事を選ぶとき、自分の好きなものでなければ売れないと思いました。好きなものに囲まれている仕事はやはり楽しいですね。でも困ったことが一つあって・・・。他社さんのお菓子を意識して食べる機会が多く、入社以来少し太ってしまいました。同期が集まると「あそこのケーキもう食べた?」「○○が新しいお菓子を出したらしいよ」という話になってしまいます。もともとみんなお菓子好きの集まりですから(笑)。
 駅に直結したお店などは、それほどゆっくり一人のお客様に接する時間がありません。短い時間の中でもしっかりお客様と向き合ってお話することを心がけています。商品の魅力を納得してお買い求めていただいた上で「美味しかった。買って良かった」というお言葉をいただけたときほど嬉しいことはありません。

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