作る喜び

第11回 2007年度 受賞作品
受賞者インタビュー
作者名:熊坂裕之
所属企業:㈱文明堂東京 武蔵村山工場

記事(紹介文)

第11回(2006年) 優秀賞 「作る喜び」
㈱文明堂東京 生産本部 製造部 製造課長 熊坂裕之さん

― 優秀賞、おめでとうございます。初めて読んだときとても印象に残った作品でした。

熊坂 あの釜出しカステラを初めてお出ししたとき、予想をはるかに越えてお客様は大変喜んでくださいました。その時の感動をずっと誰かに言いたくて仕方なかったんです。そんな折、「あったか・えっせい」の募集を知りました。優秀賞をいただけたことは驚きですが、私の“書きたい”という気持ちが皆さんに伝わったのかもしれませんね。
 社長から「できたてカステラ」を提案された時、私を含め、ベテランの職人たちは「冗談じゃない。カステラは熟成してこそ美味しい」と、はじめは聞く耳を持たなかったんです。きっともう頭が固くなってきているんでしょう(笑)。その点、若手はいろいろな方向性から考えられので「おもしろいじゃないですか。やってみましょうよ」と言われました。少しは抵抗もありましたが、お客様が喜ばれる商品をつくっていくのが職人の役目だと思うようになりました。卵の臭みをとる工夫をしたり、膨らませ方など試行錯誤を何度も繰り返して釜出しカステラが完成しました。

― 他の部門から製造部門に移られたと伺いました。

熊坂 入社して29年が経ちました。出荷作業から始まり、売店、管理とほとんどの部署を経験しました。製造部門は6年前からです。異動当初は、ずっと製造でやってきた人の中に入るのはなかなか大変でした。私が動くとスムーズさに欠けたりして……。しばらくは様子見でしたね。もちろん今はお菓子づくりを楽しんでいます。
 製造の人間はとにかく作ることに一生懸命なんです。お客様の笑顔まで想像している人は少ないと思いますね。お客様が喜んでいる姿をビデオに撮って皆に見せたら「お客様はこんなに喜んでいてくれるんだ」ということがわかると思うんですが……。現場ではお客さまに接することができませんからね。切り分ける前の10キロもある一枚もののカステラをお見せした時、「カステラってこうなっているんだ」と私たちが当たり前だと思っていることにとても感激していらっしゃいました。今までは作ることばかりに一生懸命で、お客さまの存在をどれほど大事に思っていたか、その時、私はなんだか今までお客様に申し訳なかったなという気持ちになりましたね。

― 若手の指導で気をつけていることはありますか?

熊坂 とりあえずは技術をしっかり身につけてもらうこと。それからですね。昔のように盗んで覚えるという時代ではなくなっています。技を盗む意欲も必要ですが、その上でしっかり丁寧に教えてあげればより理解できますからね。それぞれが“日本一のカステラ職人になりたい”という目標を持っています。私たちはそのための環境を作ってあげたいと思います。
 商品はこの武蔵村山工場で全て作られていて、ここから関東全域に出荷されています。私たちはこのことを頭に入れ、衛生面、異物混入の防止には細心の注意を払っています。

― 今後の抱負をお聞かせください。

熊坂 現場はお客様の顔が見えない場所ですが、常に「お客様の立場になる」ということを忘れてはいけません。まず第一に安心して召しあがっていただくこと。「文明堂なら大丈夫」という信頼を絶対に裏切らないことです。「カステラといったら文明堂だよね」と誰からも言われるようになることが今後の目標ですね。
 大事なことは日々の作業をしっかり継続していくこと。毎日の作業は簡単であっても継続は簡単ではないと思います。現場の人間には控えめな人が多いのですが、今後はそのあたりをフォローしていきたいと思っています。
 弁は立たなくても、上手な文章は書けなくてもエッセイは今の自分の気持ちを伝えられるいい機会だと思います。

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