年度別受賞作品
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第3回選評

第03回 1999年度 受賞作品
選評
作者名:高見マーケティング研究室主宰 実践女子大学講師 高見俊一氏
所属企業:

記事(紹介文)


 時々、涙腺を押さえながら一気に読ませていただきましたが、販売とは一体何なのだろう、買い物とは何なのだろうか。深く考えさせられてしまいました。今回からこれまでとは別に、B部門、お客様からの公募部分が加わっています。小学生から70歳を越えるお年寄りまで、文字通り全国から659通もの応募作品が届き、テーマの普遍性を感じています。怒りと感動、素朴な意見、洒落たエッセイ、まさに多様です。お客様との心の触れ合い、それは、一瞬の態度、一言から始まっていることを実感しました。
 A部門は、作年に比べ、やや突出した作品に欠けていたように思いますが、今回も素晴らしい作品が集まりました。最優秀作品の土井明さんの「私を映すもう一枚鏡」は、若い女性客がなかなか納得のいく靴が見つからない、接客にあたった土井さんも長時間にわたったため、次第に会話もなくなる、ふと、鏡を見るとお客様と自分の顔がつらそうな表情で映っている。その時、学生時代、父に連れられていった寿司屋での板前さんのなぜか、リラックスさせてくれた笑顔を思い出し、笑顔を失っている自分を反省する。笑顔でそのお客様に接した時、お客様も笑顔を見せてくれた。その事をきっかけに、常に最高の笑顔で接していこうと努力するという内容です。販売はコミュニケ―ションであり、自分の心のもち方次第で、相手も相応に反応してくれることを、鏡という客観的な道具を媒介に見事に表現されていると思います。
 優秀作品の㈱新星堂、松田一哉さんの「私の販売体験記」は、お客様の初老の紳士とのたび重なる接客を通じて、触れ合いが深まって行く、お客様が店頭で爪弾くギターの心うつ響きに、隠された事実を知る。そのことによって、スピリットの大切さを学ぶというストーリー。松田さんの販売への真摯な姿勢が、お客様の心を開かせ、そのことで、松田さん自身も学ぶことができたのでしょう
 B部門の優秀賞は、松本直子さんの「ありがとう、さよなら、B堂のおばちゃん!」。子供に買い物についての躾を、文房具屋B堂のおばちゃんの助けを借りて成功する話です。買い物を通じて人と人との触れ合いの大切さを子供に自然に学ばせる。「躾」の意味を教えてくれます。セルフサービス方式の導入前には、ごく自然の姿であったと思います。10円玉を握って買い物に行き駄菓子屋のおばさんと仲良くなった記憶が小生にもあります。
 また、広島県福山市盈進中学校からは、まとめて応募がありました。生徒の作品を読むと、中学校でももう立派なお客様の目をもっていることがわかります。若者のマナーの低下を嘆く声をしばしば耳にしますが、家庭でも、学校でも立派に教育できることを教えてくれています。先生、ありがとうございました。その他にも、販売員に対するお叱りもありました。鬱積していた不満をぶつけられたのでしょう。反省しなければなりません。
しかし、感動と怒りの交錯が、販売というテーマでエッセイを通じて展開されたことは、販売の場、店頭が実に、深い意味をもっていることを改めて知らされました。
 B部門の設定は、大成功だったと思います。お客様の目とは何かが、ビビッドに伝わってきます。売り手からは時として無言で、能面を被ったように見えるお客様が、実は、繊細な気分でお買い物をしていることがわかり、販売員の目には伝わりにくいお客様の姿を知ることができました。同時に、作品を読みながら、解説を加えてはいけない、分析してはいけない、ただ、個々のケースを読み、感じるだけで、販売のもつ意味、意義が自然とわかってくると思いました。これからも毎年「あったか・えっせい」を通じて心洗われる
素材が提供されることを期待します。因みに、応募作品については、協会事務所に保管されているので、協会メンバーの方には、作品に目を通されることをお勧めしておきます。

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