年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
作品ジャンルで探す
作品カテゴリーで探す
キーワードで探す
各記事には関連キーワードを設定しています。
自転車・メガネ・子供・感激…などキーワードを入力してください ※複数は(カンマ区切り)

第11回選評

第11回 2007年度 受賞作品
選評
作者名:高見マーケティング研究室主宰 名古屋学芸大学大学院教授 高見俊一氏
所属企業:

記事(紹介文)


 「あったか・えっせい」は11年目となり、今年は残念ながら応募数が少し減りましたが、作品のレベルは高くかつ安定しているという印象です。
 最優秀作品は、㈱ユーハイムの髙坂育子さんの作品「小さな出会い」です。お客様のお子さんの学校で課題としてドイツ菓子を調べており、バウムクーヘンの写真を撮らせて欲しいとの依頼から生まれたエピソードです。販売を通じての感動ではありませんが、依頼を引き受けて一生懸命対応したことがお客様に感謝されたというお話です。自社のメインの商品が教材になる、これは、新鮮な喜びになると同時に、より自信をもってお客様に勧められることにつながり、とても嬉しいことに違いありません。ユーハイムからの応募作品の中には優れた作品が多く、改めてバウムクーヘンを食べてみたいと思ったくらいです。
 優秀賞はA部門から2作品が選ばれました。㈱文明堂東京の熊坂裕之さんの「作る喜び」と㈱板垣の羽鳥素生さんの「最後のプレゼント」です。両作品に題材の新鮮さも感じました。熊坂裕之さんの「作る喜び」は「焼きたてが美味しい新しいカステラ」を作り、お客様に披露し、直接喜びの姿と声を知ったその感動が伝わってきます。多くの場合、作り手がお客様と直接接する機会は少ないのですが、その機会を得た喜びが伝わってきます。羽鳥素生さんの「最後のプレゼント」はお父さんからの注文のメガネ、出来上がったメガネを本当に喜んでくれたお父さん。しかし、そのお父さんは山で事故にあい亡くなってしまうという悲しい出来事を通じてメガネを買ってくれたお客様にとってメガネが大切な役割を果たしていることを実感することができたというお話です。
 A部門の入選作品は甲乙つけがたくいつもより1作品多い6作品とすることになりました。㈱三省堂書店、大塚真祐子さんの「届けられた春」は谷川俊太郎の詩集「はる」を題材にフェアーを企画、その際制作したディスプレイがお客さんの目に留まり、1冊お買い上げになられた後、斎場に飾らせて欲しいとの申し出を受け、喜ばれたというお話です。葛西秀美さんの「接客とは」は、新人が一歩ステップアップすることができたエピソードです。自ら進んでお客様にサービスをした行為が大変喜ばれ、接客のコツの一つを体得したというものです。小西郁恵さんの「『販売』の喜びと意味」はクレーム対応のプロセスで真摯に行動したことから味あうことが出来た喜びを、㈱虎屋の岡宏子さんの「K原様との出会い」はお客様の立場に自分が立ってみて、「私だったら」と置き換えて何がしてほしいかを考え、実行した一つの事例が語られています。木村裕美子さんの「私の顧客満足」は本当にお客さんが求めている服を喜んで買っていただい出来事を若いお客様との出会いを材料に表現しています。㈱有燐堂の池田拓郎さんの「はじめの一冊」は、新人研修でなかなか売れなかった訪問販売での1冊を買ってもらった時の感動がその後の仕事に活きていることが伝わってきます。
販売の場には、多様なお客様との出会いがあり、自ら一歩踏み出すことで感動が生まれ、そのことがその後の仕事の励みになることを教えてくれています。
 B部門は、文章は上手なのですが素材が古かったり、作意が目につく作品が見られ、残念ながら今回の入賞は3作品になりました。しかし選ばれた作品は素晴らしいものです。
 最初の作品は、小神子眞澄さんの「ボードで会話が広がって」です。耳の不自由な自分を専門店のマダムが理解し、何度かの出会いを経た後で、工夫をし、ボードを用いて会話をすることで接してくれた。それ以降楽しく買い物ができるようになったという喜びを綴ったお話です。香月千寿さんの「ほっ…ほっ…ほっ…のおもてなし」は軽快な文章で、母親であるお婆さんと和菓子屋さんの親切な店員さんとの触れ合いを知り、娘として3度もほっとしたことを記しています。長谷川えりさんの「シェフの心遣い」は、車椅子生活をしている筆者がレストランで車椅子でも食べやすいように段差を解消する台を作って、さりげなく案内してくれた時の感激が表現されています。たまたま身体の不自由な方の作品が2作品入賞しましたが、普段不便を感じられているために、親切を受けられた時の喜びが非常に大きいことが伝わってきます。
 人手不足状態が目立ってきました、サービスのレベル低下が心配です。しかし、逆に、現役の販売員の方々が質の高い、お客様に感動していただけるサービスを提供し続けていけば、若い人々は「販売の仕事」に関心を持ち、進んで専門店を目指して来てくれるものと確信しています。ただ、職場に「いじめ」が多いという話をしばしば耳にします。経営者や人事担当者はじめ関係者がそうしたことの一掃に気をつかって欲しいと思います。良いサービスは、豊かな気持ちで前向きにお客様に接している時に生まれます。

タグ(関連キーワード)

コンセプト 審査委員長紹介 お問い合わせ 日本専門店協会サイト プライバシーポリシー
Copy right (c) Japan Specialty Store Association All Rights reserved 2009.