年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
作品ジャンルで探す
作品カテゴリーで探す
キーワードで探す
各記事には関連キーワードを設定しています。
自転車・メガネ・子供・感激…などキーワードを入力してください ※複数は(カンマ区切り)

第12回選評

第12回 2008年度 受賞作品
選評
作者名:高見マーケティング研究室主宰 名古屋学芸大学大学院教授 高見俊一氏
所属企業:

記事(紹介文)


 「あったか・えっせい」は12年目、お店部門の応募が329編から419編と大幅に増えましたが、お客様部門は逆に99編から70編へと減少しました。残念ながら、今回は突出した作品が見られず、最優秀作品は無しとし、優秀作品を3編選びました。全体の水準は上がっているのですが、販売員がお客様に働きかけた結果生まれた感動というよりも、素敵なお客様に出会うことが出来、感動的な体験が得られたという“受身”型の作品が多いことに、選考の途中で気がつきました。このことは、何を意味しているのでしょうか。お客様部門の応募が減ったことと関係がないことを祈りたい気持ちです。
 優秀作品の最初は、厚田紀美子さんの作品「私の一番の『ありがとう』」です。販売の力は、仕事を通じての“気づき”のレベルが上がっていくのに比例してついてきます。若い厚田さんにとって、最初の“気づき”のキッカケを車椅子のお客様が与えてくれました。
次の優秀作品は、村川真梨子さんの作品「マドレーヌ」。直接お客様が見えにくい工場でのモノ(ケーキ)づくりの仕事に携わっている森本さんのエッセイは、誰のために作っているのかを絶えず意識することの大切さを教えてくれました。
3番目の優秀賞は、㈱ドンクの松田真由美さんの「教科書」。障害をお持ちのお客様への対応から生まれた作品です。迷惑がらずに、積極的に対応して問題を
解決した“攻め”の姿勢が見られます。素敵なお客様が増えることはうれしいのですが、専門店の接客では“攻め”も必要であることに気づかされました。
 入賞作品では、㈱三省堂書店の中村香子さんの作品「ちはるちゃんが教えてくれたもの」は、幼いお客様との触れ合いの中で、男女の先入観を捨てること、担当ジャンルの本はどんなものでも一度は目を通すということを教えられたという内容です。矢吹彩香さんの作品「一枚の葉書」は、お客様からいただいた一枚の葉書が、スランプ状態から脱出さてくれた話です。㈱大塚家具の小倉聖子さんの作品「素敵な出会い」は、既に無い同じ商品が欲しいというお客様に、その気持ちを深く受け止めて対応したことで強い信頼を得たこと、その後代わりの品をお買い上げいただいた“攻め”のケースです。㈱虎屋の桑原由美子さんの作品「カメ仙人」は、高齢のお客様とのほほえましい交流の話。㈱両口屋是清の兼定千恵さんの作品「おじさんの心意気」は、お客としてGパンを購入する際に経験した、マニュアルの限界を超える温かで快い販売員の対応に感動した話です。西條みづほさんの作品「出会いの可能性」は、“攻め”と“受身”とが相半ばするケース。不本意だった自分の接客、その至らなさを反省し、積極的な姿勢に切り替え、同じお客様に“ありがとう”の言葉をいただいたというエピソードです。長沼若菜さんの作品「心を込めた接客」は、お客様の要望に結果的には応えられなかったが、誠心誠意接したことでお客様にお礼の言葉をいただき、一生懸命に対応することの大切さを学んだ話。㈱オカダヤの諸石奈保子さんの作品「心に残った!~エピソード1~」は、電話での注文を受け、何気なく応えたお客様からFAXでお礼の言葉を伝えられました。日々たくさんのお客様とお相手しているなかで、お客様にとっては自分だけが販売員であることに気づかされた話です。そして最後は、お客様部門で唯一の入賞作品、唯一の男性による作品「少女と介助犬」。あるレストランで目の当たりにした、介助犬に対する女性店員の素晴らしい対応が紹介されています。
 日本の小売業は、ここに来て急速に21世紀の姿に衣替えを始めました。百貨店が先行していますが、専門店も例外ではありません。21世紀のパラダイムに基盤をおいた専門店業態を確立しないと、M&Aの格好の対象になりかねません。「あったか・えっせい」は今回で12回目を迎えましたが、レベルアップに向けての確かな壁に触ったような気がしました。この企画への皆さんの関心の高まりが、ようやく壁の存在に気づかせてくれたのだと思います。ひとつのヒントが、“攻め”の接客です。もちろん、強引に売り込むという意味ではありません。お客様との共鳴を導き出す接客です。壁は限界ではなく、進化の入り口です。壁への到達は進歩なのです。さらに一段と努力を注入すれば、瞬時に壁は突き破れるはずです。
最後に、「あったか・えっせい」は、若い人たちに販売の仕事の魅力を素直に感じさせる不思議な力を持っています。ぜひ現場での活用をお勧めします。

タグ(関連キーワード)

コンセプト 審査委員長紹介 お問い合わせ 日本専門店協会サイト プライバシーポリシー
Copy right (c) Japan Specialty Store Association All Rights reserved 2009.