年度別受賞作品
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第13回選評

第13回 2009年度 受賞作品
選評
作者名:高見マーケティング研究室主宰 名古屋学芸大学大学院教授 高見俊一氏
所属企業:

記事(紹介文)


 20周年事業のため、1年間間隔があきましたが、第13回「あったか・えっせい」は、以前よりもましてレベルの高い充実したものになりました。応募数も、お店部門の応募が、419編から462編へ、お客様部門が68編から77編へと増えています。世界的大不況に見舞われましたが、専門店業態には、他の小売業態に比べ、耐えるだけではなく、新たな展開を感じさせる動きさえみられます。その核となるのが、顧客と店、顧客と販売スタッフとの関係です。確実に相互に感動をともなったコミュニケーションがとられている企業が存在感を増しています。その一部を今回はぜひ、表彰作品の中に感じ取っていただきたいとおもいます。
 最優秀作品は、㈱虎屋の小林祥子さんの作品「お客様との想い出」です。結婚の申し込みに彼女の実家に挨拶に行く時の手土産に何をもっていったらよいか、お客様の相談に真剣に提案を繰り返し大変喜ばれた。お礼にこられたお客様の笑顔と同時に売り場に幸せな雰囲気が満ちたのを感じた。その想い出が仕事のやりがいになっているという作品です。優秀作品2作品の最初は、㈱新星堂の向聖秀さんの作品「私を育ててくれた一言」。商品知識の不足を注意してくれたお客様、そのことを前向きに受け止めて努力する。自分を育ててくれた過程が感謝の気持ちとともに書かれています。2番目の作品は、㈱ドンクの南まど香さんの作品「私を子供にしたおじいちゃま」です。お年寄りのお客様との触れ合い、そのきっかけとなった笑顔の挨拶、その後のお客様との対話の積み重ね、仕事を楽しんでいる様子が明るさとともに作品全体から伝わってきます。優秀作品を出した、㈱虎屋、㈱新星堂、㈱ドンクの3社からは、毎回優秀な作品が寄せられます。接客の姿勢が企業文化として定着していることを強く感じます。これからの専門店の在り方を考えるとき、「企業文化としての接客」が経営資源になっていることを確信します。
 入賞作品は、8編あり、順に、お客様の写真コンテスト応募へのアドバイスで大変喜ばれたという、福島忠則さんの「柿の実る頃」の作品。買われていく商品には、メインも脇役もないことに気づいた、㈱文明堂東京、山田昭裕さんの「五本のボーロ」の話。混雑する店内でとまどわれている車椅子のお客様への気配りに触れた、伊藤ゆかりさんの「車イスの御客様」。発売前であった季節商品をぜひ食べたいという病気のお客様のために、店全体が連携して商品を作り上げ、無事お渡しできたという感動の物語、㈱如水庵、三村美香さんの「心のリレー」。お客様に喜んでもらえる要素のひとつ、“サプライズ”を仕掛け、大成功であったという楽しさが伝わってくる、山崎由紀子さんの「喜びを何倍にも」。㈱ザ・クロックハウス、浜野美紀さんの「あるお客様との思い出」は、お客様の求めている商品が他店の商品であることを知り、その店にご案内したことで大変喜ばれ、お得意様になってくれた話。中里久美子さんの「失敗から学ぶ事」は、自分のミスでお客様を怒らせてしまったが、その時の対応に誠意を感じたお客様のこれからも頑張ってほしいとの言葉に対する感謝の気持ち。㈱オカダヤ、林樹里さんの「ごほうびは何線?」は、店内で大声で泣く子供に、機転を利かせて、電車の見えるエレベーターを紹介、無事解決しお客様に喜ばれた話です。いずれも心打つ秀作揃いです。テーマもバラエティーに富んでいます。作品は、「J.S.A .COMMUNICATION」誌に順次掲載されます。ぜひ、お読みください。
 そして、最後はお客様部門の入賞作品、佐々木恵美子さんの「シューズが教えた第一歩」は、インターネット広告関係の仕事をされている作者が、接客販売の素晴らしさ、他の販売員、店からではなく「私から買う」「この会社、この店で買う」ことの意味を痛感させた接客販売の素晴らしさを教えてくれています。
 安いものしか売れない厳しい環境が続いていますが、「あったか・えっせい」の世界は、なぜか、明るさ、温かさに溢れています。そこに大切なヒントを見出したように感じます。専門店は、「モノ」だけを売るのではなく、心の触れ合いを感じてもらう空間です。「モノ」だけを売る店に求められるのは、安さと便宜性です。そこには、お客様が感じる楽しさも、感動もありません。「売上げ」が必要以上に意識されると「モノ」にスポットが当たり過ぎてしまいます。
 専門店は、これまで、都心部、盛り場に拠点を置いて発展してきましたが、これからは、地方にも、地域を超越した存在として、顧客を感動させる専門店業態が次々と登場する新時代を迎える予感がしています。その核心部分に、顧客と専門店との感動的なコミュニケーションがあるはずです。
 既存の主力の小売業態が、不振を極める今、多様な業態で構成される専門店の中に、将来の顧客に強く支持される専門店企業の姿を垣間見たような気がしました。

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