お客様とのかけあい

第02回 1998年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:紳士服販売店勤務

記事(紹介文)

 
 初めて当店を訪れたS様は、まさに晴天の日の落雷でした。当店では永くお付き合いいただいているお得意様にも特別な値引きはいたしておりません。にもかかわらずS様は「このプライスからナンボ負けるんや?」とのご質問。あまりの失礼さに、ハッキリ冷たく「このままの正直なプライスでございますので、金額の訂正はいたしかねます」とお断りするとS様も負けてはいません。「エライキツイおばはんやなぁー。あんたぁ、それじゃあ嫁行けへんでぇー。」こんな感じで、S様と私の押し問答は30分程続きました。結果は私の勝ちとなり、文句をおっしゃりながらもS様は値札どおりの金額でお買い上げくださいました。それからというもの、S様は頻繁に当店に姿をお見せになるようになり、いつもキビシイ値引き攻撃。「できないことはできません!」と申し上げても、敵も最後まで諦めません。しかし、いつも負けるのはS様。
 そんなある日、いつも元気なS様が、なぜだか少し意気消沈気味。お話しをおうかがいすると、入院して手術をしなければならないとのことです。入院する予定の病院をおうかがいしても「ババァが見舞に着たら治る病気も悪化するわぁ」と悪態をつくばかり。S様の会社に問い合わせても、「社長は出張中でございます」と冷たい返答。こうなったら女の意地。市内の病院に電話をかけ、やっとS様の入院している病院を探し出し、お見舞にうかがいました。勝手に押しかけたので、怒られるのではないかとビクビクしていたところ、「しつこいおばはんやなぁ」と意外にも喜んでくださいました。その後、暇を見つけては病室に遊びに行き、「S様、こんなに心配してるんだから『値引きしろ!』なんて言わないでね」とお願いしたら、「ツジツマの合わへんお願いやなぁ」と納得のいかない顔でした。
 S様は元気に退院され、もちろん今も当店のお得意様でいらっしゃいますが、お約束どおり値引きのネの字もおっしゃらなくなりました。今私が考えるのは、値引き攻撃は、多忙なS様のストレス解消ゲームだったのではないでしょうか。値引き攻撃を禁止されたS様は、新たな攻撃法「H攻撃」をひっさげて元気にご来店されます。えっ? H攻撃って何かって? それは今度お話しますが、S様との戦いは、まだまだ続きそうです。

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