年度別受賞作品
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第16回選評

第16回 2012年度 受賞作品
選評
作者名:女優 檀 ふみさん
所属企業:

記事(紹介文)


 まず、みなさんに「ありがとう」と申し上げたいと思います。今回、たくさんのエッセイを拝読して、あらためて言葉というものの大切さを、つくづくと感じたことでした。
 昨日、近所のお豆腐屋さんで、いつものように絹ごしを一丁、買いました。
そのお店は、半世紀以上も(たぶん戦前から?)同じ場所にあります。その間、お豆腐屋さんのご主人は、お祖父ちゃんからお父さんへ、そして息子さんへとかわりましたが、我が家はずっとかわらず、そのお店を「ひいき」にしてきました。
 「オタクのお豆腐はおいしいですね」と伝えたことは、いちどもありません。口で言わなくても、わかってもらえている……、なんとなくそんなふうに思い込んでいました。
 けれども、みなさんのエッセイに後押しされたのでしょう。言わなくっちゃと思いました。伝えなくっちゃ。「おいしい」って、ひとこと、「ありがたい」って、ひとこと。
 「『おいしいお豆腐屋さんが近くにあるから、ありがたい、ありがたい』って、いただくたびに母が言うんですよ」
 そう言うと、「無愛想」と評判のご主人の顔がほころび、白い歯が見えました。いつも腰をかがめて、むっつりと仕事をしているご主人ですが、はっとするほど真っ白で若々しい歯でした。素敵な笑顔でした。
 もう一度、みなさん、ありがとう!
 感謝すればするほど、自分の選者としてのいたらなさに、身が縮む思いです。
 いちばん最初に拝読したのが、高橋春樹さんの「お子様のメガネ」でした。迷わず「A」と記し、「小さなお客様への温かいまなざしに好感」とひとこと。選考は楽勝だな……とニッコリしておりました。実を言うと、この作品より、「あったか」なエッセイは、そうはあるまいと踏んでいたのです。
 大間違いでした。
 その次に拝読したエッセイも「A」、次も「A」、その次も、そのまた次も……。結局、すべてが「A」だったのです。
 本当に「あったか」なエッセイばかりでした。たくさんの作品の中から限られた数を選ぶという作業は、つまり、多くを落とさねばならないという、「つめたい」作業でした。
 1企業から、多数の応募があるところがありました。困ったことには、そうした作品が、みな粒ぞろいなのです。ああ、ここの会社は社員教育が素晴らしいのだな、お客様へのまなざしが深いから、こうした文章が書けるのだな……と思いつつも、ひとつの会社にかたよるわけにもゆかず、1社1作品を原則とさせていただきました。それゆえ、選に漏れてしまった佳作も、多数あります。
 中村司さんの「闘う女のパワードスーツ」には、大震災のため発送できずにいたスーツを発送するまでの、お客様を気づかう心、お客様に寄り添う心、そしてそれに応えるお客様の様子が描かれていました。「銀座マギー」からの応募作品はどれも心に残るものでしたが、特に「元気をもらえる作品」ということで、選ばせていただきました。
 エピソードに心を奪われがちな私は、「頑張っている話」に、少しばかり冷たかったかもしれません。私自身が怠け者だから、頑張っている人に妙な引け目を感じてしまうのだろうかと反省し、「檀ふみ賞」は、思いきり「頑張った日々の話」に差し上げることにいたしました。「お客様に鍛えられ、支えられた日々」の末広明美さんは、「新星堂」のかたで、1社1作品という原則から離れてしまいますが、「檀ふみ賞」に免じてお許しください。
 最優秀作品は「感謝という言葉」の内田寿子さん。最初は苦手なタイプに映っていたお客様が、実は「嫁」へのプレゼントを探しているという。買い物の手伝いをしているうちに、どんどん好もしく見えてきて……というお話です。読んでいるうちに、その「お客様」の青年が、こちらの目にもどんどん好もしくなってきます。
 「私はお客様あなたになんだか感謝です」と結ばれているエッセイは、青年ともどもほっこりと温かく、こういう話を読ませていただいた私も、内田さん、「あなたに感謝です!」

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