ぬくぬく・えっせい

第17回 2013年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:  佐藤理奈子
所属企業:  ㈱パスポート  光の森店

記事(紹介文)


 毎日がお客様とのふれあい。そんなこの仕事に就く人たちの中でも、そのお客様と温泉に浸かった経験のある販売員は私ぐらいなのではないかと思います。
湯の町、大分県別府市。私が入社して初めて勤務した土地。町の至るところにあがる湯気に誘われて、私も仕事帰りや休日に温泉に通うようになりました。私が通い始めた温泉は特に小さく、観光地と言えど、そこに通う地元の方々にとっては何も特別ではない自宅の風呂場同然でした。「今日も暑かったなぇ。」「ほんとよ。ひっくり返るごたん!」いい
おばちゃんたちのそんな会話を聞きながら、、最初は余所者一人、少々肩身が狭かったのです。
 そんなある日、おばちゃんの一人が、少し丁寧に私に声を掛けてくれたのでした。
「お嬢ちゃん、学生さん? この辺に住んでるの?」
 社会人、そしておそらくもう“お嬢ちゃん”ですらなく、少し恥ずかしい25歳。
でも、声を掛けてもらったことが嬉しくて、聞かれてもいないのにぺらぺらと自分のことを喋りました。電車通勤で、すぐ近くのゆめタウンの中で働いていること。隣の大分市に住んでいること。学生の時は高知県にいたこと。……ついでに、自分はもう25歳だということ。「知っちょんで! あのかわいいお店やろ! 私もよう行くわ! こないだかわいいパジャマ買うたんよ。おばちゃんやけん派手かもしれんけどなぁ(大爆笑)!」「ああ、わかった! 大きなバナナがある店や!」「あそこはいろいろあって安いんでなぁ。 次はいつパジャマが安いんかえ?」なんとみなさん、うちのお店をよくご存知でした。
 そんな温泉でのやり取りがきっかけで、店を覗いて声を掛けてくれるおばちゃんもいました。「あんた、外で見るとわりとべっぴんやなぁ!」「バスタオルのかわいいのは
どこにあるんかえ?」お店でも、温泉で喋るのと同じ大音量で私に話しかけてくれるのが、うれしいやら、恥ずかしいやら。でも何だか自然と、笑顔になれました。
 そんなある時、私の熊本への転勤が決まったのです。もちろん、おばちゃんたちにも伝えました。温泉に浸かりながら。
 「残念やねぇ……。でも。また帰ってきたらここの温泉浸かりにおいで。」そう言ってくれました。ありがとう、また来るね。熊本行っても頑張るね。それしか言葉が出ませんでした。
 さて、新天地、熊本。ここではどんなお客様と、どんな出会いが待っているのでしょうか。ドキドキしつつ、今日も私はお店に向かいます。

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