まだまだ・・・

第17回 2013年度 受賞作品
入賞作品
作者名:  上林美香
所属企業:  ㈱虎屋  池袋東武店

記事(紹介文)


 早いもので、入社してから7年が経ちました。この「あったか・えっせい」を書くにあたり、たくさんのお客様の顔が浮かんできました。「○○様こんにちは」「○○様いつもありがとうございます」。1日のうちに何人かは必ず顔見知りのお客様が来店して下さいます。
 ご自宅用の商品を包みながら他愛無い会話をして、その会話の中から久々にお会いするご友人への手土産のご相談をお受けすることもあります。少しずつですがひとりひとりのお客様との距離が近くなり、お客様のお好みやご要望にあった商品の提案もできるようになりました。
 そんな中、白い杖をお持ちになっている目の不自由な年配の女性のお客様がいらっしゃいます。お1人ではなく、首から身分証明証をさげた介助の方と必ず一緒に来店されます。
 お客様は毎回、小型羊羹を5種類各2本ずつ買っていかれます。ご自宅用とのことですので、いつものように10本まとめて小さな手提げ袋に直接入れてお渡ししていました。
 何度目かのご来店の際に、「小さな袋があれば何枚か入れておいて下さい」と言われました。詳しくお聞きすると、宅配便の方が荷物を届けに来た時に、お礼に羊羹をお渡ししているとのことでした。「ご苦労様」と言う言葉と、ちょっとした心遣いが、宅配便の方にはさぞかし嬉しいだろうと思いました。
 そしてその後のご来店の際に「自分用にはちみつの味だけ分かるように輪ゴムを付けておいて下さい。」と言われました。その時初めて気付いたのです。私は何のためらいもなく5種類各2本、計10本をまとめて袋に入れて毎回お渡ししていたことを。でも目の不自由な方には、パッケージの色も書いてある文字も分からないのです。同じ形の物をまとめて袋に入れてしまったら、開けて食べてみないかぎり何の味か分からないのです。こんな当たり前のことに今まで気付かなくて、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
 宅急便の方に毎回差し上げている物だったかもしれませんが、お客様からご要望が無くても、目の不自由な方に「どちらかの種類に印をお付けしましょうか?」という一言が言えなかった自分は、販売のプロとして本当にまだまだだと思いました。
 次からのご来店の際は「小さな袋は何枚お付けしますか? はちみつ味に輪ゴムの目印をお付けしましょうか?」と必ずお聞きしています。
 宅配便の方への心遣いを始め、このお客様からはまだまだたくさんのことを学ばせていただきたいと思っています。そしていつか、声や対応で「いつもの販売員さんね」と認識してもらえるように頑張っていきたいと思います。

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