お客様がくれた元気

第17回 2013年度 受賞作品
入賞作品
作者名:  松浦奈那
所属企業:  ㈱ワシントン靴店  西銀座B1F店

記事(紹介文)

 それは入社から数週間が経った日のことでした。
「あなた新人ね。あなたじゃわからないから他の人を呼んで。」
 私のネームプレートの下に付いた若葉マークを見たお客様は、きつい口調でそうおっしゃいました。元々人見知りで口下手な為、なかなかこの仕事に馴染めず、接客も楽しいと思えずにいた私は、そんな大打撃を受け、悔しさと悲しさでしばらく涙が止まりませんでした。
「やっぱりこの仕事向いていないんだ。辞めちゃおうかな。」
 そんな風に考えていたある日、お年を召した一人のお客様に声を掛けられました。「私の足に合いそうな靴を一緒に探してくれませんか。」その時あまり仕事に対してのやる気がなくなっていた私でしたが、なかなか合う靴がなくて困っていると話す、その自分の祖母ほどの年齢の女性をどうにか助けたいと思い、必死でお足に合いそうな靴を探しました。「こちらをお試しください。」「こちらはいかがでしょうか。」入社後、間もない中で得た知識をフル回転させ、お客様のお足に合いそうな靴を20足近くお試し頂きました。
 「なかなか銀座へは来られないし、履きやすい靴ばかりだったから」と、なんと12足もお買い上げ下さいました。そして、帰り際に笑顔でこうおっしゃいました。
 「本当に履きやすい靴を探してくれて有難う。とても楽しくお買い物が出来ました。私を助けようと必死で靴を探してくれるあなたの一生懸命な姿に感動したわ。これからも頑張って下さいね。」
 涙が出る程嬉しかったのを覚えています。沢山ご購入頂いたからではありません。私がお選びした靴でこんなに喜んでもらい、楽しく買い物が出来たという最高の誉め言葉をいただけたからです。
 それからの私は別人でした。一人でも多くのお客様の笑顔が見たい、そんな気持ちでお客様一人一人の靴選びのお手伝いを私自身が楽しみながら出来る様になったのです。
 数年後、久しぶりにあの時のお客様がご来店されました。再会を果たした私たちの顔は満面の笑みがこぼれていました。「またお会いできて良かった。絶対に今日はあなたに会える。そう信じて来たのよ。」その言葉に、この仕事を続けて良かったと痛感しました。
「今日は軽くて履きやすいサンダルが欲しくて来たのよ。またいくつか探してくださるかしら。」そうリクエストされたお客様に、私は自然とこぼれ出た笑顔でこう答えました。
「はい、お任せください。」

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