お客様との出会い

第19回 2015年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:  加藤里沙
所属企業: ㈱ワシントン靴店

記事(紹介文)

「頑張れ私、頑張れ私」
ここに異動してきて、何度自分を励ましながら帰り道を歩いただろう。はじめてのお店、はじめてのスタッフ、はじめての商品、新任店長の下ではじめての店長アシスタントという立場。なにもかもがはじめてだらけで、なにもかもが不安でいっぱいでした。考える暇がないくらい、一日があっという間に過ぎてしまう。そんな中、私ははじめてクレーム対応をしました。
 店長不在のその日も、急な雨のため展開の変更など忙しく動き、やっと休憩をとっている時でした。「加藤さん」スタッフが慌てて私を呼び、「お客様がお怒りです。すみません。お願いします」と縋るように私を見て言いました。私は急いでお客様にお話を伺いました。
お客様は「足が痛すぎて歩けない。靴専門店でこんなに合わない靴を売るのか」とお怒りでした。数ある靴屋の中からこちらを選んでいただいたにもかかわらず、残念な気持ちにさせてしまったことをお詫びし、再度フィッティングを確認させて頂きました。
拝見したところ、お客様の足はやや甲が高く、圧迫され痛くなってしまったようでした。その頃にはお客様の怒りもおさまり、どんな靴を履いてもいつも足が痛くなってしまうこと、靴は痛いものだと諦めていたこと、特にドレスシューズはかたいので靴擦れで血が出てしまうこともよくあること、そんな時にシューフィッターのいる店のPOPを見て期待しご来店くださったことを話して下さいました。
お客様に普段の足の悩みを伺いながら、何度も何度も調整を繰り返しました。お客様にご納得頂けたのは、ご来店されてから一時間半が過ぎた頃でした。お帰りの際に、「本日担当させて頂きました加藤と申します。気になることがございましたら、また是非お持ちいただけますでしょうか」と名刺をお渡ししました。
 何か月が過ぎたころ、「お客様がご来店くださいました。
「修理をお願いします。今まで靴を修理してまで履くのははじめてです。一生懸命調整をして履きやすくしてくれたから、これからもずっと大事に履きたい靴と出会えました。これを修理に出したら履ける靴がないので、おすすめはありませんか。もう、あなたからしか靴は買わないと決めました」
と嬉しそうに言うお客様を見て、私は泣きそうになりました。
 このお客様に出会えたことで、「頑張れ私。頑張れ私」と呪文のように唱えることもなくなりました。「もっとお客様のためにこうしたい。お客様のために何ができるだろうといつも考えながら帰り道を歩いています。

タグ(関連キーワード)

コンセプト 審査委員長紹介 お問い合わせ 日本専門店協会サイト プライバシーポリシー
Copy right (c) Japan Specialty Store Association All Rights reserved 2009