みんなで作る〝おもてなし〟

第19回 2015年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:  大井美樹
所属企業: ㈱玉 屋

記事(紹介文)


 私の働くJRタワーには、札幌にお住いの方はもちろん、たくさんの観光のお客様がいらっしゃいます。近年は外国からのお客様が非常に多く、昨年度上半期は過去最多の60万人近い方が来札されたとのこと。私の勤務している店舗にも、中国・台湾・韓国など、アジアを中心とした様々な国のお客様がご来店されています。ここ数年はスタッフもすっかり対応に慣れ、少なからず自信を持って接客できるようになりましたが、それでも文化の違いは避けられないもの。今回はそんな日常の中で触れた、あったかエピソードをご紹介します。
 夏のバーゲン中のこと。店内はたくさんのお客様で賑わい、ご試着室・お会計共に並んでお待ち頂くような、いわゆる「セールモード」真っただなかのある日、中国人のご家族がご来店されました。順番を守り、譲り合いながらお買い物を楽しんで下さる日本のお客様とは違い、外国の方には私達の常識など分からないのが当たり前。店内を自由に占領される姿に、次第に周りの日本人の皆様からは少しずつイライラした表情が見え始めました。
 そんな中、あるご家族の購入商品が決まりお会計の順番が来た時、今度はそのお子様(5歳位の男の子)が突然駄々をこねて泣き出してしまったのです。困惑しているお母様、完全に放置のお父様、後ろにはお会計を待つ列がズラリ。苦笑いや溜め息が聞こえてきそうな表情です。
「勘弁して・・・」とつい弱音が出そうになった時、どうやら男の子が自分の手からお金を渡したがっているようだと気が付きました。試しに彼の前にしゃがんで手を出してみると、お母様の出したお金を一度取って私に渡してくれました。「サンキュー」と言うと、今度はニッコリ笑顔。そのまま手を振って出ていきました。
 私は小さな願いを叶えてあげられたことに安堵しつつ、「さて、他のお客様へのフォローをしなくては」と内心焦って振り向きました。すると、先程まで表情の曇っていた皆様がなんと笑顔で彼らを見送り、私への労いの言葉をかけて下さる方までいらしたのです。
その後はイライラムードはどこへやら、お客様同士も順番を譲り合いお話しされていて、私は皆様の心の広さに感謝すると共に、国境を越えた「心の輪」の様なものを感じて心が暖かくなりました。何よりも、日本の「おもてなしの心」を共有できたことが嬉しかったのです。
 5年後に開催される東京オリンピック。札幌にも今の何倍もの外国人観光客がいらっしゃることでしょう。もちろん文化の違いなどで上手くいかないこともあると思います。しかし今回の出来事を通じて、「日本人は大丈夫だ」と私は感じました。
人の気持ちをくみ取り、譲り合い、相手を尊重する心が、日本には根付いています。それらすべてを含めた「おもてなしの心」を発信していくのは、私たち商業施設で働く者の務めだと思います。私たちからお客様へ、そしてお客様と一体となって、外国からの皆様を暖かく迎えられるような未来を目指し、これからも邁進していきたいと強く思いました。


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