接客が楽しくなった瞬間

第20回 2016年度 受賞作品
入賞作品
作者名:  阿部未来
所属企業: ㈱かねまつ

記事(紹介文)


 新入社員として店舗に配属され、2ヶ月ほど経ち、少しずつ仕事にも慣れてきた頃のことでした。夕方も過ぎ、お客様も少なくなってきた頃に一人のお客さまが来店されました。
 入店された時から怖そうな表情でお声掛けがしづらい雰囲気を感じてしまい、一声かけることがなかなか出来ずためらいがちになっていました。1年先輩のスタッフに目を向けると、先輩は他のお客様と楽しそうに接客をしていました。私はその先輩に憧れて、先輩のようなプロの販売員になりたいと思っていました。先ずはいつも先輩のやっていることを真似てみようと気持ちを持ち直しました。そして、その日いちばんの笑顔と元気と爽やかさを持って、お声を掛けてみました。
 ご高齢の方との接し方は「自分が孫になること」がポイント。今日の天気はどうか、何を食べたか、体で痛いところはないかなど、商品以外の他愛もない内容のことをお話しして、それを一緒になって楽しむことが大事だと以前先輩からアドバイスを受けたことを思い出し、意識してお話をするようにしました。
 はじめはややそっけない感じのお返事からスタートしましたが、商品以外の何気ない会話を続けいくと、ご来店された時の接客させてもらえない雰囲気が少しずつ和らぎ、お客様から
「今日履いている靴に近い雰囲気のものはないかしら」など、質問をして貰えるようになってきました。
 会話が盛り上がってくると、私と同じ年齢のお孫さんがいらっしゃること、しかも私と同じ接客業に就かれていることを教えてくださいました。会話がどんどん盛り上がり、かわいいお孫さんは海外勤務のため、しばらく逢えていないので少し寂しいお気持ちも話してくれました。
「あの子もこうやってお客様を相手に仕事しているのかと思うと応援したくなっちゃった」
「今日は一生懸命やってくれたからこれを買っていくわね。買い物するつもりはなかったんだけど、あなたのお陰で楽しかったわ」
とパンプスを一足お買い上げ頂きました。
 はじめの印象のまま、お客様と距離を空けていたら全く聞き出せなかったことでしょう。その方に興味を持って頂けることを探し出し、掘り下げることで、いろいろなことを教えていただくことができました。
 あとで店長や先輩にこのことを話すと、「それは人の喜びを自分の喜びとして楽しむことができたから。それが接客業の醍醐味だよ。良い接客ができたね」と言って貰えました。
新人の私でもこんな素敵な体験をさせてもらったことに感謝し、次のお客様にもこの経験を活かしていけるように頑張ろうと思った接客でした。
今年からは私も先輩になりますが、後輩にもこうした接客の楽しさを感じて貰うため、お手本となれるように頑張っていきたいと思います。

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