年度別受賞作品
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サンタさんにもらったよ

第20回 2016年度 受賞作品
入賞作品
作者名:  各務 奈津美
所属企業: 一般

記事(紹介文)


 娘が小学2年生の時、クリスマスプレゼントに自転車が欲しいと言われた。
さて、困った。おもちゃならリクエストされたものを買って枕元に置いておけるが、自転車はそうはいかない。ちゃんと足がつくか、大きさは合っているか、確認しなくてはならない。
まだサンタクロースを信じている年齢だ。親がサンタだとバレないようにしなくては。
 「うーん、自転車もいろいろあるから、サンタさんが迷わないように、どういうのがいいか決めてから、お願いしよう」と娘を言いくるめ、12月初旬、自転車屋さんに連れて行った。
 子どもの自転車って夢がある。特に女の子用は、ロマンチックなパステルカラーから、ビビッドでかっこいいものまで。ピンクに緑に青に赤。ハートがついていたり、音符が描かれていたり。これはサンタじゃなくても迷うだろう。その中で、娘は濃い水色の自転車が気に入った。しかし、サドルを目いっぱい下げても足がつかなくては、買ってあげられない。私は店員さんに試乗をお願いした。
 担当してくれたのは、若い女性の店員さんだった。子ども好きだったようで、娘の前にしゃがみ込んで、娘と視線の高さを合わせてくれた。店員さんは、「サンタさんへお願いするプレゼントかな?」と、娘に聞いた。恥ずかしがり屋の娘は、黙って頷いた。
 店員さんに出してもらった水色の自転車は、何とか両足の先がついた。今年のクリスマスプレゼントはこれに決定だ。だが、ここで問題発生。登録の手続きのために、用紙に記入しなくてはならない。お金も払わなくては。
娘が見ている前で、さすがにそれはまずいなぁと思っていると、「じゃあ、あっちでお母さんに、この自転車くださいって、サンタさんにお手紙書いてもらうね。他の自転車見て、ちょっと待っててね」と、店員さんがフォローしてくれた。
 それは、なんとも素敵な心遣いだった。神対応という言葉がもてはやされているようだが、上手に謝ることよりも、お客さんを嫌な気分にさせないことよりも、丁寧な言葉遣いよりも、心に残る大事なひと言ってあるんだなぁ。
 あの店員さんのおかげで、娘は夢を消さずにすんだ。この自転車はサンタさんにもらったんだよと、おじいちゃんとおばあちゃんに自慢していた。

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