年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
作品ジャンルで探す
作品カテゴリーで探す
キーワードで探す
各記事には関連キーワードを設定しています。
自転車・メガネ・子供・感激…などキーワードを入力してください ※複数は(カンマ区切り)

手話で伝えた「ありがとう」

第05回 2001年度 受賞作品
最優秀作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:フォトショップ勤務

記事(紹介文)

 
 毎日毎日口にしている「ありがとうございます」という言葉。普段でも会話の最後やお客様のお帰りの際に自然と口に出てくるようになった言葉だけれど、何回言っても足りないほどのお客様はたくさんいらっしゃいます。そしてまた、言葉では伝えることのできないお客様も…。
 去年の冬、ご夫婦のお客様がポストカードの注文にいらっしゃいました。最初にスタッファーを出されたので、「ポストカードのご注文ですね。タイプなどはもうお決まりですか」と聞いてみましたが、返事がありません。それというのもそのお客様はご夫婦とも耳が聞こえない方で、私の言っていることがわからなかったのです。口でしゃべることに慣れてしまい、言葉に不自由な人もたくさんいるということをつい忘れていた私は、そのお客様に対して大変申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。それでもせっかくいらしてくださったお客様です。紙を取り出して、「ポストカードのご注文ですね」と書くと、明らかにほっとしたご様子でした。
 それから、「ネガはありますか」「このタイプの金額は…」などのやりとりを全て紙に書くと、お客様もわからないことや質問などを紙に書いてくださいました。そんなふうにしてやりとりするのに30分くらいかかったでしょうか。折しも、ポストカードシーズン真っただ中。「なるべく早く書かないと、このお客様も他のお客様もお待たせしてしまう」という気持ちで、一生懸命書きまくりました。おかげで私の指はじんじん痛んだものの、注文をお受けすることができてうれしい気持ちでいっぱいでした。
 そして、お客様がお帰りになる時、私の勤務している店の朝礼で教えてもらった「ありがとうございます」の手話を思い出し、思い切ってやってみたのです。通じるかどうかもわからず、自信もなかった…。けれども その時のお客様の本当にうれしそうな顔といったら! あの笑顔は忘れることができません。そして、お客様は同じ手話を私に返してくださったのです。今までで一番心に残る「ありがとう」でした。
今年もまたあのお客様にポストカードの注文を出しに来ていただけると信じて、今日もまたたくさんのお客様に「ありがとう」を言い続けます。

タグ(関連キーワード)

コンセプト 審査委員長紹介 お問い合わせ 日本専門店協会サイト プライバシーポリシー
Copy right (c) Japan Specialty Store Association All Rights reserved 2009.