年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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温かなミルクティー

第05回 2001年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:パン販売店勤務

記事(紹介文)

 
 販売員である私の毎日の楽しみは、お客様との小さな会話です。「販売員」と「お客様」との間には、目に見えないある一定の距離がありますが、会話をすることによってその距離が縮まり、お客様に一歩近づいた気持ちになれるからです。「こんにちは、いらっしゃいませ。今日はいいお天気ですね」というように、できるだけ自分からきっかけを作るようにしています。
 冬のある日のできごとです。週に2、3度、足を運んでくださる年配のご婦人が、お気に入りの食パンとミニクロワッサン、菓子パンなど、いつもの3倍ほどの量をお買い求めくださいました。「こんばんは、いつもありがとうございます」「今夜、息子夫婦と孫たちが家に集まるの。孫たちはここのミニクロワッサンが大好きでねぇ、ついつい買いすぎちゃったわ」と、とてもうれしそうに話していました。私も何だかうれしくなり、「楽しみですね。お気をつけてお持ち帰りくださいませ」と気持ちよくお見送りできたつもりでしたが、その後、自分のミスに気がつき、頭の中が真っ白に。ミニクロワッサンをお渡し忘れてしまっていたのです。
 すぐに後を追いましたが、手遅れでした。幸いお名前を覚えていたので、顧客名簿で連絡先を調べ、まずは電話でおわびしました。お客様は「遠いから今回はいいわ。また、今度寄った時にいただくわ」とおっしゃいましたが、楽しみにしているお孫さんのことを考えると自分の気持ちがおさまらず、「いいえ、私の不注意ですので、ご迷惑でなければ今からうかがわせてください」と電話を切り、お宅へ向かいました。
 そのお客様は玄関の外で待っていてくださり、「わざわざありがとう。寒かったでしょう、これ飲んで温まりなさい」と温かいミルクティーを用意してくださったのです。無事に届けることができたという安堵感とその温かい言葉で胸がいっぱいになり、思わず涙が出てしまいました。帰り際にもう一度、おわびの気持ちを伝えると、「もういいわよ。私はおたくのパンとあなたが好きだから、また来週も買い物に行くわ」と励ましてくださいました。
 その日、私は自分のミスを反省すると同時に「お客様の期待を裏切らないよう、今まで以上に気をつけよう。そして一人でも多くのファンをつくっていこう」と決意しました。

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