年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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祖母と訪ねたレストラン

第05回 2001年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:一般

記事(紹介文)

 
 今は介護保険制度が始まり、障害をもつ人が社会に出やすくなった。私の体験は
 、十数年前の、まだエレベーターやトイレの関係で車イスで出かけられる所が少なかった頃のことだ。私が高校の卒業を間近に控えた冬の日、祖母が脳梗塞のため倒れ、8ヶ月の闘病生活の末、左半身不随で車イスの生活を余儀無くされた。
 女家族で、祖母の面倒を見るのは、母か私しかいない。しかし、母も私も、生活のため仕事をしなければならない。平日になかなか祖母の相手をしてやれないため、1ヶ月に1回タクシーでデパートへ出掛けるのが日課になっていた。買い物をしてお昼を食べて帰るというパターンである。そんな事を数回繰り返したある月のこと。
 月に1回の祖母の楽しみ。いつものようにデパートへ出かけ、中にあるファミリーレストランに入った。時間をずらしたうえに、レジで「車イスですけどいいですか」と確認したにもかかわらず、混雑しており、うまく車イスが中に入らなった。仕方なく通路側に車イスの祖母を座らせた。人が通るスペースは充分あるので大丈夫だろうと思っていた矢先、年配の女店員が通りながら「ここに居られたら邪魔なんです」。私はカッとした。〈祖母は好きで車イスに座ってるわけではないのに、言い方が優しいのならともかく邪魔者扱いなんて〉。その場で食券を返金してもらった。レジの人もあっけに取られていたがその値段2880円。忘れもしない。そして十数年たった今でも、そのデパートには足を踏み入れていない。
 それからというもの、祖母も外食に抵抗があったのか、買い物しても食事はしなかった。そんな折のボーナス。ここはと意を決し、某しゃぶしゃぶ店へ出掛けた。3段の階段を車イスを持ち上げ、車イスであるとのことを告げると、にこやかに「結構です」と。私たちの番になり、席に案内してくれ、車イスの位置などを2、3人で、ああでもないこうでもないと祖母が食べやすいようにセッティングしてくれる。もう感激。そのうえ途中で祖母に「おいしく召し上がっていただいてますか」と聞いてくれたりして、とてもいき届いたサービスをいただいた。
 日頃、食の細い祖母は、母と私が驚くほど食べ、肉を追加する始末。帰り際には、店員さんが座って祖母の目線に合わせて「またお越し下さい」とひと言。レジでは「階段お手伝いしましょう」と男性のお店の方。本当に涙が出るほどうれしいサービスだった。その証拠に、家に帰った祖母の「おいしかった。また連れて行って」という言葉とともに、パジャマに着替えた祖母はすごーく膨らんだお腹になっていた。

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