年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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電化製品の温かさを

第06回 2002年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:一般

記事(紹介文)

 「いらっしゃいませ、どうなさいましたか?」
 「いやあ、テレビが映らなくなっちゃってねえ」
 「だいじょうぶ、直りますよ」
 僕の職場は、電気の修理店をしています。日々いろいろな方から、相談や依頼を受けていて、その希望に答えていくことが、ひとつの存在価値になっています。小さな故障から大きなトラブル、電化製品の使い方や買い物の相談まで、実に多くの方に利用していただいています。そのためにヒヤヒヤすることもあります。「娘の運動会に間に合うように、ビデオカメラを至急直してほしい」とか「今は亡き人を忍ぶためにステレオを直したい」等々。
 ある時、随分と古いレコードプレーヤーを持参された方がいました。もう20年以上前の物のようで、直感で(新しい物へ買い換えた方が良さそうだなあ)と思いました。その方は、「これは、僕が学生の頃にアルバイトして貯めたお金で、初めて買ったプレーヤーなんだけど、動かなくなっちゃったんだよねえ。直るかなぁ」とお話しになる50歳前後の方でした。
 「愛着のある物なので、時間やお金がかかっても構わないから、やってみてください」と続けておっしゃいました。僕は、お客様の熱意に押されて、「直るかどうかわかりませんが、やってみます」と受け答えて、品物を預かりました。内部を点検して、手直しできる所は全てやり終えたのですが、どうしても部品を交換しないと直らない所がありました。しかし、その部品は、もう製造メーカーでは作られていない物でした。
 数日経ったある日、「もしかしたら使えるかもしれない中古品があったよ」と、声をかけていた周囲の仲間から連絡がありました。早速それを取り寄せて、部品を交換してみたところ、何とか動き出してくれました。翌日早々お店にいらっしゃったお客様は、動き出したプレーヤーを前にして、目尻にシワをよせてニッコリと微笑み、まるで元気になったわが子を見るかのように、「いやぁ、どうもありがとう」と本当に喜んでくれました。僕は、「ありがとうございました」と見送りながら、グッと沸き起こるやりがいと充実感を得ることができました。
 日常生活を便利で豊かなものにしてくれる電化製品ですが、ある面では血の通わない無機質的な冷たさを感じるところがあるかもしれません。しかしそれも、使う人により暖かみが生れてきて、心や想い次第で家族の一員にさえなりうるのだなぁ、と教えられた気がしました。
 今後ますますデジタル化が進むにつれて、生活様式にもいろいろと変化があると思います。その様な時に、電化製品と暖かく付き合っていく提案をし、お客様が一個人の立場で求めていることに応えていこうと思います。そしてそのことが、心も生活も豊かな、〈暖かい未来づくり〉に役立ってくれたら嬉しい、と感じました。

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