約束の五百円玉

第06回 2002年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:婦人服販売店勤務

記事(紹介文)

 
 昨年の12月のことです。車椅子にのった高校生くらいの女の子が1人で店に入ってきました。うつ向き加減で商品を見ていましたが、上の商品などが見づらいみたいで車椅子を動かして遠くから見たりしていました。それに気付いて女の子の側に行き、「いらっしゃい。私でよかったら手伝わせてくれるかな。嫌やったら離れるし、あなたのお手伝いさんと思って何でも言って」と言ったところ、「ありがとう。お姉さんみたいに声かけてくれた店員さん初めてや。いつも嫌な顔されてばっかりで、今回もそうかなって思っててん」と、本当にホッとした様子で言ってくれました。
 彼女は〝優子ちゃん〟といって、3年前に交通事故で車椅子の生活になってしまったそうです。高校に入ってからは、毎日家の手伝いを自分のできる範囲でしておこずかいをもらっては少しずつ貯めて、今年のクリスマスはそのお金でお母さんに服を買ってあげようと、今回私たちのお店に来てくれたのです。他のお店でもずっと見ていたみたいですが、どの店の店員さんも冷たい目が嫌で、もしこの店でも同じだったら今年はあきらめるつもりで来店してくれたそうです。
 私は話を聞いて、優子ちゃんはすごい決心で店に来てくれたのだと思い、「最後にこの店を選んでくれて本当にありがとうね。ゆっくり見てな」。そう言って、車椅子に手を掛け一緒に選びました。店員とお客様というより、友達同士のような気分で2人とも一生懸命でした。そのかいあって、ニットのアンサンブルとスカートに決定しました。
 ラッピングをすませ、お会計したところ、お金が500円足りなかったので、こんなことをしてはいけないのでしょうが、私は優子ちゃんが今まで一生懸命お金を貯めていたことを聞いていたので、自分の財布から500円を出して、優子ちゃんに渡し、「このお金は、あげるんじゃなくて貸してあげる。次来てくれた時でいいから返してね」と言い、次の来店を約束したのです。
 そしてクリスマスの日、優子ちゃんとプレゼントの服を着たお母さんが約束通り来店してくれました。優子ちゃんは笑顔で、「お姉さんありがとう。お姉さんみたいな店員さんに会えて本当に良かった。メリークリスマス」と言って、500円玉とケーキを渡してくれました。私は、すごい感動してしまいました。
 それ以来、優子ちゃんのように、お客様一人ひとりに満足していただける店員になるため、毎日店に立っています。優子ちゃん本当にありがとう。又、来て下さいね。


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