年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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今日のお店の目玉商品は?

第06回 2002年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:一般

記事(紹介文)

 
 妻が「ここが有名な小樽の名所ね」と、札幌から車を飛ばして着いた先で言った。
 「親戚の結婚式にはまだ時間が十分にあるから、少し歩き回って見るか」と、周囲の散策をすることにした。秋口で少し肌寒さを感じたが、期待通りの街で、気分は異国情緒の中にあった。
 「そろそろ結婚式場に行かないと」という妻の言葉で目が覚めて、来た道を戻らないで、式の案内状に書かれた地図から「こっちの方向だろう」と歩き出した。目標とする目印の建物がなかなか見つからない。
 「やっぱり道を確かめないとダメだ」と思って、近くのお菓子の店に飛び込んだ。
 店の人は親切に教えてくれた。
 (どうもオレは方向オンチだ。それにしても小樽の街は分かりにくい)などと考えていたためか、私の理解度は不十分で、「うん? うん!」と頼りなさそうに聞き返す私を見かねてか、お店の人が「近くまで私が案内してあげます」と言ってくれた。
 私は(助かった!済みません)という気持ちを込めて店の人に深々と頭を下げた。それでも感謝の気持ちがおさまらないので、(何か店のものを買おう)と改めて見ると、茶菓子の専門店であった。
 (高いなあ。でも何か少しは買わなきゃ)と思い、「今日のお店のお薦め品、目玉商品は何ですか?」とその人に尋ねてみた。その人は、私の心の中を察知してか(無理しなくてもいいですよ)という気持ちを込めて言ったのだと思う。
 その人は「今日の目玉商品は、私の笑顔です」と言った。その言葉を聞いた途端、無意識に、私は一番高級そうな茶菓子を指差していた。素晴らしい言葉に取り付かれたように。
 その人の案内で(20分以上かかって)、目標の目印のある建物の所に着くことができた。その人に感謝を込めて、夫婦2人で、また深々と御礼の頭を下げた。その人も笑顔でお辞儀をして、着物の裾をひるがえして帰っていった。目標の建物の奥に、結婚式をする教会があった。
親戚の新婦に、妻が、極上の笑顔を添えて、「おめでとう」と、神戸から持って来たお土産に、お店の人の<笑顔と親切>というソフトに包まれた茶菓子を添えて、手渡していた。

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