あなたが満足、わたしも満足

第07回 2003年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:靴販売店勤務

記事(紹介文)

 
 「悔しいよ…」今にも消えそうな声でつぶやき大粒の涙を流したのは、ちょうど4ヶ月前のことでした。
私は、学生の頃からアルバイトなどを通じて販売の仕事に魅力を感じていました。そんな私が販売員として働き始めてから半年が経とうとしています。この半年間を思い返してみると、今と変わらず充実していたと思えます。それはきっと、今と同じように毎日たくさんの思いがけない出来事があったからでしょう。
 「悔しいよ…」。在庫の隅で泣いたあの時が、自分の中で一番忘れられない出来事でした。仕事にもだいぶ慣れてきて、その日もいつもと同じように接客をしていました。ところが接客をする度にふられてしまって、気付けば閉店近い時間になっているじゃないですか! 何が原因なのかを考える余裕もないほど、動揺し、あせっている私がいました。
 今度こそはと、パンプスを見ていたお客様に声をかけようとしていたその時、「この靴、ちょっとゆるいんですけど直してもらえますか?」と、後ろから他のお客様が私に声をかけてきました。正直、焦って動揺していた私は、靴を調整する修理よりも販売をしたいのにと思ってしまっていました。しかし、先輩方からアドバイスをもらいながら時間をかけて丁寧に調整をしてさしあげると、お客様は「わぁ、おどろき! 嬉しいわ」ととても喜んで下さいました。そして帰り際には、「ありがとう。そろそろサンダルを買おうと思っていたから、明日ゆっくりまた来るわ。その時は久松さん、お願いね」。と私のネームバッチをちらっと見ておっしゃいました。その瞬間、今までの焦りがスーッと消えてしまい、目頭が熱くなっていくのが分かりました。
 お客様を見送り、涙がこぼれないように在庫へかけ戻る間、今日接客をしたたくさんのお客様の顔が頭の中に浮かんできました。思い返せば、「デザインは好きなんだけど、履き心地が…」とおっしゃっていたお客様が多かったことに今頃になって気付いたのです。さっき喜んで帰って行ったお客様と同じように、丁寧な調整ができていたらと思うと、悔しさと一緒に涙もこみ上げてきました。たとえ買って頂けなかったとしても、もっと最善を尽くしていれば私の懸命な接客態度に満足してお帰りになったかもしれない…。
 それから4ヶ月が経った今、あの時の事は私の心の支えとなっています。接客とは真ごころがあってこそと実感することができた私は、ふられたって、もうめげません!

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