年度別受賞作品
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あたたかい言葉

第08回 2004年度 受賞作品
入賞作品
作者名:鹿野裕子
所属企業:㈱新宿高野 銀座松屋店

記事(紹介文)

 
 入社して1年7ヶ月が経とうとしています。まだ私にはお得意様はいませんが、以前より少しずつお客様と会話をする機会が増え、私の顔を覚えてくださるお客様ができるようになりました。販売業をしていて喜びを感じる時は、自分が薦めた商品に対して、「あなたがこの前薦めてくれたこの○○、とても美味しかったわよ」と言ってくださることや、楽しく買い物をなさっているお客様の笑顔を見た時です。そんな時、この仕事をしていて本当に良かったという気持ちになります。そして、この気持ちがいつにも増して強く感じた出来事があります。
 それは、今から4ヶ月前のまだ蒸し暑い8月のことでした。いつものように売場に立っていると、お母さんと小さな男の子(6歳くらい)が来店されました。お客様が私に「アップルパイを下さい」と言いました。私がいつものように笑顔で「ありがとうございます」と受け答えすると、「ここのアップルパイは中にりんごがたくさん詰まっていてすごく美味しいのよね」と、商品を誉めてくださいました。私はとても嬉しく思いました。しかし、その後そのお客様の話を聞くうちに、とても切ない思いになりました。
 聞けば、男の子が卵アレルギーでほとんどのケーキが食べられないということでした。この時買われたアップルパイも、中に入っているりんごだけを食べると聞き、食べたくても食べることができない男の子の気持ちを考えると、胸がしめつけられるような思いでした。少しでも力になりたいと思い、スポンジやムースを使ったケーキではないけれど、メロンを丸ごと使ったメロンデザートという商品をお客様にお薦めしました。お客様はアップルパイと一緒にそのメロンデザートを買ってくださり、その時の接客はこれで終わりました。
 それから1ヶ月くらい経ったころ、そのお客様が男の子を連れて再び来店してくださいました。「あなたが前に薦めてくれたメロンデザートがとても美味しくて、子どもも気に入ったのでまた買いに来ました」と、お客様は言ってくださいました。自分が薦めた商品をお客様に受け入れていただいたこと、再び来店していただいたことが本当に本当に嬉しかったです。この時のお母さんと男の子の笑顔は、いつまでも色褪せることなく今も私の胸の中で輝いています。

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